一般的には「親方」と呼ばれている相撲の年寄の収入はどれぐらいなのでしょうか?また、どんな項目があるのか気になりますよね。
前回の力士の給料はどれぐらいか?に続く第二弾ということで、今回は年寄の収入について見ていきましょう。
また、最後にはその収入は果たして高いのか低いのか?についてもまとめてみました。どうぞ御覧ください。
この記事の目次
年寄の役職
まずはじめに年寄の役職を簡単に説明しておきましょう。
相撲協会の構成員として年寄たちは様々な職務にあたっており、役職を大きく分けると理事・役員待遇委員・委員・参与・そして役職のつかない平年寄の6つに分かれます。さらに理事のなかには理事長と理事、そして副理事の3つの階級に分かれます。
理事
相撲協会の「役員クラス」である理事は、定員が10~15名の間(外部有識者2名以上3名以内)となっており任期は2年で再任が可能です。理事への任命は、年寄から選出された理事候補と外部から選ばれた理事候補の中から評議員会によって選ばれて任命されることになっています。
年寄からの理事候補選びは全年寄による単記無記名投票によって行われます。
理事長・副理事
理事長は、理事会での互選によって選ばれます。また、副理事に関しては年寄による選挙によって副理事候補が選出されて、理事会で任命されます。
委員・主任・役員待遇委員
委員と主任、そして役員待遇は理事会の折衝を経て理事長が任命し任期は各1年となっています。
役員待遇に関しては、委員のなかでもランクが上で給与が理事(副理事)と同等額になります。
参与
年寄の停年は65歳となっていますが、平成26年(2014)11月より停年を迎えて退職した年寄に対する再雇用制度が設けられました。これによって希望者で再雇用が認められた場合には最長で5年間、参与の立場で協会に残ることが出来ます。
報酬項目一覧
お待たせしました。それでは年寄の報酬項目を見てみましょう。以下の表のようになっています。
収入項目 | 理事長 | 理事 | 副理事 役員待遇委員 | 委員 | 主任・参与 | 平年寄 |
---|---|---|---|---|---|---|
月給 (基本給+手当) | 140万5千円 | 140万5千円 | 123万2千円 | 100万1千円 | 84万9千円 | 78万4千円 |
年額給与小計 (月給×12回) | 1686万円 | 1686万円 | 1478万4千円 | 1201万2千円 | 1018万8千円 | 940万8千円 |
年額賞与 | 281万円 | 281万円 | 246万4千円 | 200万2千円 | 169万8千円 | 156万8千円 |
場所手当 (年3回) | 60万円 (20万×3回) | 60万円 (20万×3回) | 60万円 (20万×3回) | 60万円 (20万×3回) | 60万円 (20万×3回) | 60万円 (20万×3回) |
年寄名跡金 | 60万円 (5万×12回) | 60万円 (5万×12回) | 60万円 (5万×12回) | 60万円 (5万×12回) | 60万円 (5万×12回) | 60万円 (5万×12回) |
在勤手当 | 60万円 (5万×12回) | 48万円 (4万×12回) | 48万円 (4万×12回) | 18万円 (1.5万×12回) | 18万円 (1.5万×12回) | 18万円 (1.5万×12回) |
合計 | 2147万円 | 2135万円 | 1892万8千円 | 1539万4千円 | 1325万6千円 | 1235万6千円 |
勤続手当 (最低)月5000円 (最高)月2万円 | (最低)年6万円 (最高)年24万円 | (最低)年6万円 (最高)年24万円 | (最低)年6万円 (最高)年24万円 | (最低)年6万円 (最高)年24万円 | (最低)年6万円 (最高)年24万円 | (最低)年6万円 (最高)年24万円 |
衣装補助費 ※審判委員のみ | 30万円 (10万×3回) | 30万円 (10万×3回) | 30万円 (10万×3回) | 30万円 (10万×3回) | 30万円 (10万×3回) |
いかがでしょうか。項目がたくさんありますね。そして流石に相撲協会の「トップ」と言える年寄たちの報酬額ですね。
年寄や力士、そして行司や呼出に床山など相撲に携わる人達はすべて相撲協会の協会員であり、相撲協会から給料を貰う立場なのですが、同じ協会員でも幕下以下の力士たちは月給すらないことを考えると、その差は歴然!「大きな逆ピラミッド」が形成されているようです。
それでは次は、収入項目ごとに説明していきましょう。
場所手当
年6場所のうち、東京場所である3場所(1月、5月、9月場所)には場所手当が支払われます。1回が20万円なので年間では60万円になります。
年寄名跡金
年寄名跡を所得して襲名した者に対して支払われるもので月額は5万円となっており、会計年度末に一括して支給されます。
なお、一代年寄に対しても同様に支払われます。
勤続手当
参与を含む年寄には勤続年数に応じて勤続手当が月々支給されます。
- 勤続6年以上11年未満 5千円(年額6万円)
- 勤続11年以上16年未満 8千円(年額9万6千円)
- 勤続16年以上21年未満 1万1千円(年額13万2千円)
- 勤続21年以上26年未満 1万4千円(年額16万8千円)
- 勤続26年以上21年未満 1万7千円(年額20万4千円)
- 勤続31年以上 2万円(年額24万円)
この勤続年数に関しては、満30才以上の勤続年数によって計算されるそうです。
在勤手当
協会に在勤している役員や年寄に支給されます。
- 理事長 月額5万円(年額60万円)
- 理事・副理事・役員待遇委員 月額4万円(年額48万円)
- 委員以下 月額1万5千円(年額18万円)
衣装補助費
土俵下で勝負の判定をする審判は、紋付羽織と袴の正装が義務付けられている為、その正装を維持するために協会から審判委員に対して東京場所ごとに支給され、年額で30万円になります。このように審判委員に対して支給される項目のため、一般に「審判手当」と呼ばれています。
なお、審判委員は理事会の折衝を経た委員のなかから理事長が任命することになっており、定員は20名以内で任期は1年、再任も可能です。
年寄の退職金
年寄の退職金についても触れておきましょう。
年寄に支払われる退職金は、勤務年数に応じた「年寄退職金(勤務加算退職金)」と、各役職にあった者(理事長・理事・委員・参与・主任)に対しては「役職加算退職金」が支払われます。参与には努めた年数で加算され、それ以外には努めた期数に応じて加算されます。
まず、年寄を10年務めた者には250万円が退職金のベースとして付きます。そして、これ以降は1年ごとに40万円が加算されます。年寄株を自らが保有している「借株」ではない親方には更に30万円が加算されますので、計70万円が1年ごとに加算される計算になります。
次に役職加算退職金をみると、理事には1期(2年)につき70万円が加算されます。3期務めると210万円ですね。委員の場合は1期(1年)につき15万円になります。
貴乃花親方の場合
平成30年(2018)10月1日付で退職となった元一代年寄・貴乃花について上の条件を当てはめてみましょう。
貴乃花が現役引退を表明したのは平成15年(2003)1月場所9日目でした。これを受けた日本相撲協会は格別な功績があった貴乃花に「一代年寄・貴乃花」の名跡を贈呈します。
そこから年寄退職までの期間は約16年(15年8~9ヶ月)で、その間に理事を4期(8年)務めました。
では、当てはめていきましょう。
年寄勤続約16年(一代年寄)
250万円+(70万円×6年)=670万円
理事を4期
70万円×4期=280万円
これを合計すると950万円となります。勤続が満16年ではない為、月割計算だとするともう少し減りますが、いずれにしても報道されている「約1000万円」という退職金の内訳が分かっていただけたかと思います。
年寄報酬は果たして高いのか?
以上、年寄の報酬がどれぐらいなのかを見てみると、なかなかな高給取りだということが分かりましたね。しかし、そもそも年寄を襲名するためには「年寄名跡」が必要であり、この名跡を取得するためには「億の単位」でのお金が必要だと言われています。
相撲協会が公益財団に移行した現在では、表向きは金銭による譲渡は認められていませんが、実態としては高額での取引が続いていると言われる年寄株。
平成25年(2003年)には現・立浪親方(旭豊)が、先代である6代立浪(羽黒山)から「年寄名跡の承継による支払い」を求められた訴訟があり、地裁によって6代立浪からの1億7500万円の請求が認容されたケースもあります(のちに高裁、最高裁で原告敗訴の逆転判決あり)。
さらに遡ると若貴ブームの90年代前半では3億円近くまで高騰したとも言われています。
これほど高額なお金を支払ってまで年寄になることに(金銭的に)メリットはあるのか、果たして年寄への報酬は高いのかどうか?ちょっと考えてみましょう。
年寄の生涯収入はどれぐらい?
まずはこんな表を作ってみました。
役職等 | 年収 | 平均年齢 | 停年までの年数 |
---|---|---|---|
理事 | 2135万円 | 54.2才 | 10.8年 |
副理事 役員待遇委員 | 1892万円 | 57.2才 | 7.8年 |
委員 | 1539万円 | 49.0才 | 16年 |
主任 | 1326万円 | 39.6才 | 25.4年 |
平年寄 | 1236万円 | 35.0才 | 30年 |
状況に応じて変動する勤続手当や「審判手当」は省き、年収も四捨五入しています。更に、平成29年11場所時点での役職ごとの平均年齢と停年までどれぐらいかを載せてみました。
平均年収を計算してみると約1625万円で、平年寄が停年まで30年ということは、ざっくり言って相撲の親方(年寄)としての生涯収入は停年までに4億8750万円になりそうです。
どうでしょう。年寄名跡の取得にはたしかに高額なお金が必要でしたがそれでも十分に見合った生涯所得と言えそうですね。もちろんこれに加えて退職金もありますし、そもそも年寄襲名条件を満たす力士ですから現役時の収入もかなりのものです。
まとめ
年寄はよほどの不祥事がない限り、停年である65歳までの職が基本的には保証されます。そして勤続年数が長くなるほど役職も上がっていくという、ひと昔前の日本の働き方であった「終身雇用と年功序列」が今も根付いている世界と言えそうです。
ただし、この年寄になれるのはほんの一握りの元力士だけです。現役時の活躍があればこそ、その対価として年寄への門戸が開かれているのです。
さて、ここまで年寄の給料を見て来ましたが現職の年寄の地位は気になりませんか?
当サイトでは現職の年寄についての一覧をご用意しておりますので、どうぞご覧ください。協会での地位とともに、現役時の成績もあわせて確認できます。
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