相撲を観始めたばかり方にとっては、番付の階級はなかなか頭に入ってこないのではないでしょうか?階級は分かるけれど東や西はどういう意味?という人もいるのではないでしょうか。
また、階級は分かるけれどその番付はどういう基準で決めているのかを知りたい方もいますよね。
そこで今回は、大相撲の番付の階級の詳細やその決め方、そして地位ごとに解説をしていきたいと思います。
これが分かれば相撲がもっと面白くなりますよ!
この記事の目次
大相撲の番付とは全ての力士のランキング
相撲の番付とは力士の地位と順番を表したもので、本場所の成績によって翌場所の番付が決定されます。地位は序ノ口から横綱までの10段階で格付けされ、同じ地位の力士も「東」と「西」や「何枚目」という言い方で、すべて順番が決まっていきます。ひとつずつ説明していきます。
地位は10段階
力士の番付では地位が10段階に分かれています。最高位が横綱で次いで大関、関脇、小結と続いて最後が序ノ口になります。
- 横綱(最高位)
- 大関
- 関脇
- 小結(大関、関脇、小結で三役)
- 前頭(これより上位は幕内力士・前頭は平幕と呼ばれることも)
- 十枚目(十両)(これより上位は関取)
- 幕下二段目(幕下)
- 三段目
- 序二段
- 序ノ口(最下層)
地位は大きく分けて関取か幕下以下(取的)かに分かれます。この境目は力士にとって大きく、例えば大銀杏を結えたり、締込(まわし)の質が変わったり、化粧まわしをつけて土俵入りがあるかどうか、塩をまけるかタオルを使えるか、部屋では大部屋か個室か食事や風呂の順番等々、さまざまな違いがあります。
そして何より大きいのが十両以上の関取にならないとお給料(月給)が貰えません!関取は地位によって100万~280万円近くの月給と「力士報奨金」という手当が相撲協会より支給されますが、幕下以下は場所ごとに7万~15万円ほどの「養成員場所手当」と、「幕下以下奨励金」と呼ばれる勝星(星あたり1500~2500円)と勝越星(星あたり3500~6000円)によって支給される奨励金のみになっています。
何故これほど差があるのかと言うと、実は幕下以下の力士の正式名称は「力士養成員」で、相撲界では関取になってはじめて一人前と認められる世界だからなんですね。天と地ほどの差がある関取と幕下以下、入門した力士たちは、まずは関取になることを目指すのです。
また、関取のなかでも前頭以上の力士のことを総称して「幕内力士」と呼びます。テレビ中継でもお馴染みであり、相撲界の花形とも言えます。
ここまで出てきた地位を整理すると、関取は幕内と十両力士の総称であり、関取と幕下以下では大きく待遇が異なるのです。
番付はピラミッド型?
「大相撲ピラミッド」と言われることもあり、何となくピラミッド型をイメージされる方もいるかと思いますが、実際のところは「底辺」である序ノ口の人数は少ないです。序二段、三段目、幕下まではピラミッド的ですが、関取以上になると十両の定員28名に対して幕内力士は42名であるため、全体的に見るときれいなピラミッド型ではありません。
枚数は若い方が上位
地位による格付けの次は枚数です。番付では地位ごとに複数の力士がいるため、そのなかでさらに序列がつきます。これを「〇枚目」というように「枚数」で表現しており、数字が小さいほど上位になります。
例えば前頭7枚目と前頭10枚目では7枚目の方がより上位の力士になります。
地位が異なる場合では当然地位が優先されますので、前頭7枚目と十両2枚目では地位が上の前頭が格上、つまり枚数が大きくても前頭7枚目の方が上位です。このように、地位と枚数、そして次に説明する東西の三段階で序列が決まっていきます。
ただし、横綱、大関、関脇、小結には枚数は使いません。この「枚」は平幕(前頭)以下の力士の番付に使われるものです。横綱や大関などは東西と、番付表に載っている順番によって序列が成されています。
東と西では「半枚」違う
さて、番付表を見ていると、例えば「東の前頭7枚目」と「西の前頭7枚目」のように、東西で同じ枚数の力士がいることに気づくと思います。この場合、同じ順位になるかというとそうではなく、東の力士が上位になります。その差は「半枚」上という位置づけで、先ほどの例の場合、西の前頭7枚目は「前頭7.5枚目」とイメージすると分かりやすいですよ。
横綱や大関などの役力士も東西に分かれています。同じ役に力士が三人いて、例えば東の大横綱が2人いた場合は、番付表ではより先に書かれている力士が上位となります。
ただしこの東方と西方や「半枚」の差は、地位や待遇面での差ではありません。ではどういう時に差を意識するかというと、番付の昇降時です。
例を使って説明しますね。
たとえば、来場所の幕内定員がひと枠空きそうな状況だとします。で、十両の成績を見てみると東の十両筆頭と西の十両筆頭が共に8勝7敗で同じ勝ち越し数でした。さて、この場合にはどちらが来場所の入幕を決めるのか?
そうです。この時に東西での半枚の差が勘案されて東の筆頭が優先となり、来場所の入幕を果たすことに(基本的には)なるのです。
番付は誰が決めているの?
番付は、本場所終了後3日以内に行われる「番付編成会議」によって作成されます。この会議は相撲協会の審判部の親方衆(部長・副部長・委員)で構成され、幹事も同席します。行司も書記として参加しますが発言はしません。
「3日以内」と幅を持たせた表現ですが、基本的には日曜日の千秋楽が終わった3日後の水曜日に開かれています。
この会議によって本場所での力士の成績がそれぞれ評価され、翌場所の番付が決定されます。この番付発表は通常、翌場所の初日13日前となっていますので、そこまでは極秘扱いなんです。ただし、使者によって昇進が告げられる横綱や大関、それと化粧まわしなどの準備が必要になる新十両昇進者については、番付編成会議当日に公表されます。
初日は日曜日ですので、初日の13日前ということは原則的には2週間前の月曜日になります。
番付はどういう基準で決めているの?
番付編成会議ではどのような基準で番付を決めているんでしょうか?まず、番付は「本割」と呼ばれる本場所での取組成績によって決定されます。この本割には巡業や花相撲(トーナメントや福祉相撲など)は含まれません。また、優勝決定戦も本割扱いではないので、優勝同点の力士同士はどちらも同じ成績として評価されます。(横綱同士、大関同士は例外があります)。
勝ち越しと負け越し
番付を決める目安として「勝ち越し」ラインがあります。他の力士の成績と番付によって一概に言えない要素はたくさんあるのですが、勝ち越しは翌場所の番付を上げるための第一条件になってきます。
大相撲は本場所15日間で関取(幕内・十両)が15番、幕下以下で7番勝負なので、勝ち越しラインは関取で8勝、幕下以下は4勝となります。
多くの力士にとってはこの勝ち越しラインがまず目標になり、さらに白星を積み上げることを目指します。
ただし、大関や関脇からの昇格については勝ち越しだけではありません。また、最高位である横綱には昇降はありません。このあたりについては後述していきます。
さて、反対に負け越し、つまり8敗や4敗してしまうと翌場所の番付は基本的に下がることになります。怪我などによる休場や途中休場も同様です。
関取の番付の基本的な決め方を説明すると、例えば8勝7敗なら1枚、9勝6敗なら3枚上がるというように勝越星ひとつあたりで1枚上昇、反対に7勝8敗なら星がひとつ足りずに1枚番付が下がるという具合になっています。ただし、これは他の力士の成績もあるので一概には言えません。ここが番付予想の難しいところでもあり面白いところでもあります。
幕下以下ではひとつの星の差で大きく番付が変動するので、予想はさらに困難になります。しかし、幕下15枚目以内での全勝優勝は十両に昇進や三段目の全勝優勝は枚数問わずに幕下に昇進などの特例も存在しています。
以上がざっくりとした概要になりますが、はじめに書いたように他の力士の成績やそれぞれの番付位置などによって変動要素がたくさんあります。これについてはまた別の記事でご紹介していきます。
まずは、勝ち越すか負け越すか!?これをポイントにして相撲観戦を楽しみましょう。
次からは各地位について説明していきます。
横綱
大相撲力士の最高位となるのが横綱で、番付の最上位に位置します。定員は定められておらず、また、番付には必ずしも横綱がいる必要はありません。
横綱の昇進規定
横綱への昇進には大関で二場所連続優勝するか、これに準ずる好成績が必要であると言われています。また、成績だけではなく「品格・力量が抜群」であると評価される必要があります。
横綱には降格がない
横綱になった力士は現役を退くまでその地位が保たれます。他の地位の場合は、負け越しはもちろん怪我などで休場をすると番付が下がるわけですから、これは大きな特権です。ただし、この特権が裏を返せば横綱に対する高い要求への代償になっているわけです。出場するからには優勝か、それに次ぐ成績を求められるのが横綱です。
横綱には降格がないため、技量の衰えや怪我などで横綱の責任を果たせない場合は引退しか道がありません。
⇒歴代横綱の成績表!在位数が長い横綱や優勝回数が多い横綱は?
大関
大関は横綱に次ぐ地位です。番付には最低2名(東西)大関が必要とされているため、もしもいなくなった場合は横綱が大関を兼ねて「横綱大関」となります。
大関昇進の基準
大関昇進のための基準は明確にはされていませんが、「関脇で連続三場所の安定した好成績」であるとか、「三場所連続で三役(関脇・小結)の地位にあり、そこで通算33勝以上」などと言われています。
カド番(角番)とは?
「大関は、二場所連続して負け越したときは降下する」と『番付編成要領』に定められています。このため、先場所を負け越した次に迎えた本場所のことを通称で「カド番」、その大関のことを「カド番大関」と呼んでいます。
「強い大関」が本来ですが、翌場所の進退のかかった「よわい」カド番大関の勝敗も観戦のポイントとなってきます。
大関復活のチャンス
健闘空しく二場所連続で負け越してしまった場合は関脇に降格となります。ただし、関脇になってしまった元大関には大関復活のチャンスが残されています。それは翌場所で10勝以上した場合には大関に戻ることができるのです。
このように大関は、その地位を巡って見どころがたくさんあります。
大関は、二場所連続して負け越したときは降下する。降下は全休を含めて関脇に止め、次場所にて10勝以上した場合は、大関に復帰する。
番付編成要領 第一章 力士番付編成 第八条より抜粋
関脇
関脇は大関に次ぐ三番目の地位になります。番付には最低2名(東西)関脇が必要とされています。昇進のための規定は特になく、通常は前場所で成績優秀だった小結が昇進することが多いです。
関脇にまで上がっても、一場所で跳ね返される者もいれば、ここに留まって安定した成績を残して大関に昇進する者いる。関所のような地位ですね。
小結
小結は関脇に次ぐ四番目の地位です。この小結からが三役と呼ばれます。番付には最低2名(東西)小結が必要とされています。昇進のための規定は特になく、通常は前場所での番付と成績を考慮して、上位2名が関脇、それに次ぐ2名が小結となることが多いです。
小結は力士の実力が試される
関脇と同じく、前頭上位や同じ小結、そして横綱・大関陣との対戦が組まれていきます。平幕から勢いに乗って小結にまで上がってきた力士は、その実力が試されるわけです。小結で負け越すと原則的にすぐに平幕に陥落してしまいます。ここで踏ん張れるかどうか、力士の力を問われる地位が小結です。
前頭
前頭(まえがしら)から上位の力士を総称して幕内(まくうち)力士と呼びます。前頭は小結より下位の幕内力士たちの地位で、小結以上と区別して「平幕(ひらまく)」と呼ばれることもあります。
地位は枚数(と東西)で示されて、前頭5枚目、前頭2枚目と枚数が少ないほど上位になります。前頭1枚目は特別に、前頭筆頭(まえがしらひっとう)と呼ばれます。これは、これ以下の地位でも同じで、1枚目の場合は筆頭を用います。
幕内力士は幕内土俵入りがあり、華やかな化粧まわしを見ることができます。
前頭の定員は?
平成16年(2004)1月場所より幕内力士の定員は42名以内と定めらています。幕内力士のなかには横綱や三役力士も含まれるため、前頭の数は上位力士の人数によって変動することになります。
金星は平幕に与えられた勲章
前頭の地位で横綱を破ることを金星(きんぼし)と呼びます。これは名誉であり、大きな注目を集めます。また金星は名誉だけではなく獲得すると給金も上がります。もちろん横綱戦ですから懸賞金もたくさん掛かっていますね。
これは平幕のみに与えられた特権ですので、三役力士が横綱に勝っても金星とは呼びません。
十両(十枚目)
通称で十両(じゅうりょう)と呼んでいますが、正式には十枚目(じゅうまいめ)です。この十両より上位の力士のことを関取(せきとり)と呼びます。お相撲さんのことを「○○関(ぜき)」と呼ぶことがありますが、この「関」という呼び方は十両以上の関取にのみ使われます。では、それより下位の力士はというと「○○」さんと、四股名に「さん」付けで呼ばれています。いかにもお相撲さんな四股名なのに「さん」付けだと不思議な感じがしますね。
関取である十両からは大銀杏を結い、博多織の締込(まわし)を締めることが出来ます。化粧まわしでの十両土俵入りもあり、取組では塩をまいたり仕切りの制限時間が長くなるなど幕下以下とは待遇が大きく違ってきます。
十両の定員は?
平成16年(2004)1月から現在は28名以内となっています。それ以前は、昭和42年(1967)5月場所より定員26名以内という期間がありました。
幕下(幕下二段目)
幕下は十両より下位の地位で関取と取的(とりてき:幕下以下の力士の俗称)の分かれ目になります。待遇面での差がいちばん激しいため、場所の後半にもなると翌場所の地位をめぐって幕下上位と十両の下位の勝敗争いも見どころになってきます。
略称は幕下ですが、正式には幕下二段目と呼びます。これは番付表の上から二段目に書かれていることが由来です。
幕下以下は7番勝負
十両以上の関取陣は本場所15日間全て対戦がありますが、幕下以下は7番勝負になります。つまり、勝ち越しのラインは4勝となります。
取り日(とりび)は、1日おきや2日続けて1日休みなど、力士によって様々に組まれます。15日間取組のある関取陣は毎日が緊張の連続ですが、「休み」のある幕下以下も、ある意味コンディションと集中力を保つのが難しいと言えるでしょう。
幕下15枚目以内での全勝
相撲協会の内規では「幕下15枚目以内での全勝は十両昇進の対象とする。ただし番付編成の都合による」との内規があります。
番付は生き物と言われるように、他の力士の状況も考慮して番付は編成されます。十両からの陥落力士や、より幕下上位で好成績力士が多かった場合など様々な要因が絡んで番付は決定されます。
幕下の定員
幕下の定員は120名となっています。つまり東西で60枚ですね。あとで紹介しますが、「幕下附出し」と呼ばれる力士はこの定員には含まれません。
幕下の25枚目以上は、本場所の場内で配られる星取表に四股名が掲載されます。また幕下15枚目以内は、成績次第では翌場所での十両昇進の可能性もあるため「幕下上位」と特別に呼ばれています。
幕下附出し
学生相撲出身者で特に優秀な者は、前相撲を経ずに幕下の地位から初土俵を踏むことができる制度が「幕下附出し(まくしたつけだし)」です。
これはアマチュア相撲の4大大会の優勝者で25歳未満、さらには優勝日から1年以内の者など様々な決まりがあります。
三段目
幕下二段目に次ぐ地位で、番付表の上から三段目に載っていることから三段目と呼ばれています。令和4年5月場所から定員は180名で東西90枚になりました(3月場所までは定員200名、東西100枚)。
序二段
三段目に次ぐ地位で、番付表には下から二段目に載っています。序二段には定員ありませんが東西で100~160枚ほど、200~300名ぐらいになります。ちなみに平成29年九州場所では104枚208人です。
序ノ口
序ノ口は番付で一番下の地位になります。定員は特にないですが、おおむね40~60人(20~30枚)ぐらいでしょうか。平成4年(1992)5月場所では、なんと77枚153人もいました。
虫眼鏡が必要?
文字の大きさでも地位を表すのが番付表ですから、序ノ口ともなると文字は小さくてとっても細いです。そのため序ノ口のことを「虫眼鏡」や「細字」と呼ぶこともあります。
日常に浸透している「序ノ口」
相撲の世界では最下層に位置する序ノ口ですが、日常のなかにはいちばん溶け込んだ存在かもしれません。「こんなのまだまだ序の口だ」という具合にこの言葉を使うことがありますよね。「横綱」なんかよりもずっと日常に浸透している相撲用語かもしれません。
まさに相撲人生の入口とも言えるこの地位から横綱までは遥かに遠いですが、希望もたっぷりな番付です。未来の横綱探しに朝早く出掛けるのも楽しいかも?
番付外
番付に四股名がまだ記載されていない力士のことを番付外と呼びます。具体的には、新弟子検査に合格して前相撲を取り「出世」を得るまでの力士のことになります。
また、序ノ口の力士は怪我や病気などで全休してしまうと番付から落ちてしまうので、もう一度前相撲を取って再出世をする必要があります。この力士たちも番付外扱いとなります。
この辺りのことは別記事で詳細にまとめましたので、興味のある方はぜひどうぞ。
⇒【解説】前相撲とは?その意味と仕組み
⇒【解説】新序出世披露とは?
おすすめの番付表
いかがでしたでしょうか。番付の階級と仕組みを知るとますます相撲観戦が楽しくなりますよ。始めのうちは、なかなか覚えられないと思いますので、また相撲を見ながらでも見返していただけたらと思います。
さて、こちらでは最新の番付をまとめています。普通の番付表とは違い、いろんな情報をくっつけていますので相撲観戦が捗ると思いますよ。何と言っても私が欲しいがために作っていますので…(笑)。