新序出世披露と出世力士手打式は新弟子にとって晴れの舞台

取組以外にも相撲の楽しみ方はたくさんありますが、様々な儀式もそのひとつ。

大相撲の本場所は15日間行われていますが、決まった日に行われている儀式があります。

新序出世披露もそのなかのひとつで、通常8日目にとり行われています。この儀式は新弟子たちにとって、とても大切な儀式なんですよ。

また、千秋楽には出世力士手打式という儀式もあります。

そこで今回は新弟子にまつわる儀式として、新序出世披露と出世力士手打式をご紹介いたします。

新序出世披露とは?

新弟子検査に合格した新弟子たちは、すぐに力士になれるわけではありません。「力士の入り口」である序ノ口格を得るためには前相撲というものを取る必要があります。

前相撲についてはこちら⇒【解説・前相撲】序ノ口前の前相撲とは?

この前相撲を無事取り終えた新弟子たちは、晴れてお披露目の日を迎えます。

それは「新序出世披露(しんじょしゅっせひろう」と呼ばれる儀式で、翌場所から序ノ口として番付に四股名が載ることを、本場所の土俵上でお客さんに披露することになります。

前相撲の記事でも説明しましたが、3月場所は5日目、9日目、(三番出世があれば)12日目に、それ以外の5場所では8日目に行われます。

それぞれ三段目の取組の途中、勝負審判が交代する前に行われますので実際に観ることができますよ。

時間はだいたい12時50分頃でしょうか。幕下中継などのテレビでも紹介されるはずです。

化粧まわしの重み

披露される新人たちにとってはここからが相撲人生の始まりです。この時ばかりは師匠や部屋、もしくは一門の関取から借りた化粧まわしを締めることが許されます。

この「関取」とはどういうものか御存知の方もいると思いますが、一応説明を。関取というのは十両以上の力士のことで、相撲の世界ではこの関取になって初めて一人前と認められます。

それに対して幕下以下は、正しくは「力士養成員」と呼ばれており、まだ力士としては認められていない為、待遇等あらゆる面で扱いが違ってきます。この辺りの話はまた別の記事でご紹介します。

さて、関取と呼ばれる力士はどれぐらいの割合なのか平成29年9月場所の番付で見てみましょう。

数えてみると関取は70人力士の総数は660人。ということは関取10.6%に対して幕下は89.4%と実に9割近くが力士養成員なのです。

どうでしょう?こうしてみると化粧まわしの重みが分かってきますね。十両以上の関取だけに許された化粧まわしですから、大抵の力士は新序出世披露である、この日だけしか締めることが出来ないのです。

そう考えると大変な重みであり、まさに一世一代の日となるわけです。

儀式の流れ

新序出世披露の流れを見ていきましょう。

化粧まわしをつけた新序力士たちは若者頭の先導によって入場、揃って土俵にあがり蹲踞(そんきょ)して待ちます。

次にひとりひとり所属部屋と四股名、そして出身地が読み上げられていきますので、呼ばれた力士は蹲踞の姿勢から立ち上がり、一礼してまた蹲踞に戻ります。

すべての新序力士の紹介が終わると幕下格以下行司が土俵に上がり、口上を延べることになります。

呼出が「東西東西」と触れると、行司は右手で白扇の扇の部分を持ち、要の部分を蹲踞している力士たちに向けて次のような口上を延べ始めます。

「これに控えおります力士儀にござりまする。只今までは番付外に取らせおきましたるところ、当場所日々成績優秀につき、本日より番付面に差し加えおきまする間、以後、相変わらずご贔屓お引き立ての程、ひとえに願い上げ奉りまする」

「力士儀にござりまする」辺りで扇はいったん下げられますが「上げ奉りまする」のところで呼出によって柝(拍子木)が打ち鳴らされ、行司はふたたび白扇を上げて礼をしながらまた下げます。

こうして口上が終わると新序力士たちは立ち上がり、四方に礼をしたのち土俵を降ります。

この新序出世披露を終えた力士たちは、翌場所から番付に四股名が載り、序ノ口から横綱を目指すのです。

初々しい新序力士たち

新序出世披露の見どころは初々しい新序力士たちの姿と、古式ゆかしい口上にあるわけですが、それ以外にもポイントが。

それは蹲踞です。

この蹲踞が意外と大変なんですよ。と言うのは、化粧まわしはそもそも一人前の力士が締めることを前提に作られているもの。

すなわち大抵の新人にとっては大きすぎでブカブカです。さらに6~8kgぐらいと重さもかなりあります。それに加えて、新序力士たちは相撲経験がある者もいれば無い者もいるので蹲踞自体おぼつかない子もいるわけです。

すると、蹲踞で待っている間にふらふらして隣の子にぶつかりそうな子も出てくるわけですね。もちろん、蹲踞から立ち上がるのもひと苦労です。その為、出世披露の本番前には練習するそうですよ。

緊張のなかにも、ふと笑いがおきることもある新序出世披露ですので、機会があったらぜひ観ていただきたいです。

再出世の力士も出世披露される?

新弟子たちにとっての晴れの舞台である新序出世披露ですが、序ノ口を陥落してしまった「再出世」力士も、また披露されるのでしょうか?

これは、以前は行われていましたが現在は再出世力士の出世披露は行われていないようです。

再出世力士として数度披露を受けている意外な人物としては、現在、立浪部屋の師匠である7代立浪(元小結・旭豊)がいます。

旭豊は病気や怪我のために2度序ノ口を陥落し、なんと3度も出世披露を受けたらしいですよ!その後は着実に番付をあげていき小結にまでなりましたが、何とも意外ですね。

出世力士手打式

新序力士のための儀式はもうひとつあります。それは千秋楽の表彰式終了後に土俵上で行われる「出世力士手打式(しゅっせりきしてうちしき)」というものです。

出世披露を受けた力士たちにはお神酒が振舞われて、若者頭や世話人・親方など、そして会場に残ってくれたお客さんたちと共に三本締めを行います。

これからの相撲人生をみんなで祝福する様子が晴れやかで、何ともあたたかい雰囲気の儀式です。

神送りの儀式で行司を胴上げ?

さらに、このあと「神送りの儀式(かみおくりのぎしき)」というものが行われます。これは別の記事で詳細をご紹介しますが、土俵祭でお迎えした神様を元の場所へとお戻しするための儀式です。

で、この時にですが、参加した行司の中で一番格下の者が土俵上でなんと胴上げされるのです!この胴上げは新序力士たちが行う都合上、新人が少ない場所では行わないらしいので、見れたらラッキーかも。

まとめ【新序出世披露と出世力士手打式】

いかがでしたでしょうか?この記事が何かしら参考になって、新序出世披露をもっと楽しんで頂けたら幸いです。また、前相撲のことを知ると、もっと楽しめますので、そちらの記事もどうぞご覧ください。

 

新序出世披露と出世力士手打式のまとめ
  • 新序出世披露は、新弟子たちが翌場所から序ノ口として番付に四股名が載ることを、本場所の土俵上でお客さんに披露する儀式。
  • 3月場所は5日目、9日目、(三番出世があれば)12日目。それ以外の5場所では8日目に行われる。
  • 新序出世披露の時間は三段目の取組の途中、勝負審判が交代する前で、だいたい12時50分頃。
  • 師匠や部屋・一門の関取力士から化粧まわしを借りて出世披露を受ける。
  • 化粧まわしは十両以上の関取のみに許されたもの、9割近くの力士はこの日を最後に二度と締めることなく力士人生を終える。
  • 「出世力士手打式」は、千秋楽の表彰式後に土俵上で行われる。
  • 出世披露を受けた力士たちにお神酒が振舞われて、若者頭や会場に残ってくれたお客さんたちと共に三本締めを行う。

前相撲の記事⇒【解説・前相撲】序ノ口前の前相撲とは?


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3 thoughts on “新序出世披露と出世力士手打式は新弟子にとって晴れの舞台

  1. 知野

    TVで手打式というものを初めて見た。
    昭和56年九州場所では無かったはず。
    やっていれば忘れる訳がない。

    返信
    1. レイ 投稿作成者

      知野様、コメントをありがとうございます。

      「昭和56年九州場所をご観戦の時には無かったはず」とのことですね。

      基本的にこの儀式は表彰式がすべて終わり、観客も帰ったあとに行われる儀式ですので、
      観戦にいらっしゃった九州場所でもやっていたのでは?と思います。
      調べてみると、その場所にも7人の力士が前相撲を取っていますので出世力士もいたようです。

      はっきりとは分かりませんが出世力士手打式は、出世力士がいる場所では行われいたと思われます。

      ふだん目にする機会が少ない儀式ですが、今回の無観客開催ではレアケースとして出世力士手打式も中継されましたね。
      とても貴重な放送になりました。

      返信

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