力士の退職金はいくら?相撲で気になる引退時のお金を徹底解説!

力士が引退する時にはどれぐらいの退職金が貰えるのでしょうか?力士の収入の記事ではたくさんの項目をご紹介しましたが、この退職金も奥が深そうです。

さて、今回「退職金」をご紹介していく前に一点補足事項があります。それは力士には退職でなく、あくまで「引退」という言葉を用いるそうです。ただ、世間的には分かりにくいので「退職金」として説明していきましょう。

退職金の受取条件

収入面でも関取と幕下以下で差がありましたが退職金も同様に違いがあります。まずは十両以上のいわゆる関取が退職金を受け取るための条件を整理しましょう。

資格者と非資格者

十両以上の力士が引退したときには「退職金」として「力士養老金」「勤続加算金」が支給されますが、この支給額は資格者と非資格者で違いが出てきます。

資格者とは、横綱・大関・三役は昇進後に1場所を全勤幕内・十両は在位連続20場所以上、または通算25場所以上在位の力士で、それに満たない者は非資格者となります。ただし、いずれも全休した場所は含みません。

除名処分を受けた者には支給されない

日本相撲協会では「解雇」より重い処分として「除名」があり、一般企業でいう懲戒解雇処分にあたります。この除名処分を受けた場合には退職金(力士養老金と勤続加算金)は一切支払われません。また、現役力士が除名された場合にはそれまでの番付や地位、そして成績などが一切無かったことになるそうです。とても重い処分ですね…。

ただし大正14年に現法人が設立されて以降、この除名処分を受けた力士はいません。過去にはいろいろと問題を起こした力士もいたように記憶していますが、除名ではなく解雇処分で処理されたり、先に自ら引退を選んだようです。

では、次からは「退職金」の中身を見ていきましょう。

力士養老金

力士養老金は十両以上に昇進した力士が引退するときに支給されます。各地位ごとに金額が定められているので表にして見てみましょう。

資格の有無横綱大関関脇・小結平幕十両
資格者1500万円1000万円763万円763万円475万円
非資格者763万円475万円
+(勤続場所数-1)
×12万円
115万円
+(勤続場所数-1)
×15万円
モデルケース3場所の場合499万円145万円
10場所の場合583万円250万円

非資格者の場合は在籍場所数によって上乗せ分が計算されますので、モデルケースとして3場所と10場所の場合を載せてみました。

ちなみに「場所数-1」という計算式のため、1場所で跳ね返された力士は0で掛けることになるので場所ごとの上乗せはなくなりますね。シビアです。

勤続加算金

次は勤続加算金です。各地位ごとに定められた金額に勤続場所数を掛けて、それを積み上げた金額が支給されます。つまりは横綱が引退する場合であれば、十両の時の場所数×15万円+平幕の時の場所数×20万円+三役…というように、経歴を追っていくイメージですね。こちらも表で見てみましょう。

地位1場所
あたり
モデルケース横綱大関三役平幕十両
横綱在位50万円(例)10場所勤続500万円
大関在位40万円400万円400万円
三役在位25万円250万円250万円250万円
平幕在位
(資格者)
20万円(例)20場所勤続200万円200万円400万円400万円
平幕在位
(非資格者)
15万円(例)10場所勤続150万円150万円
十両在位15万円150万円150万円150万円150万円150万円
総計
(括弧内は非資格者)
1500万円1000万円800(550)万円550(300)万円150万円

1、2列目の組み合わせで、地位ごとに定められた1場所あたりの金額が分かります。4列目以降が引退時の地位として見てください。

先ほどと同様、モデルケースを用意しました。それぞれの地位で10場所勤続だった場合での計算です。ただし、関脇・小結どまりの場合は資格者・非資格者でベースの金額に違いが出て来るため、それを考慮して資格者の最低基準20場所の場合の場合も付け加えています。こうして各在位ごとに金額を出して積み上げた金額が一番下の総計です。

実際には各力士の実力とどういった経歴を辿っているかで総額は大きく変動するでしょう。やはり上の地位で長く場所を努めたものには手厚くなるシステムと言えます。あ、ひとつ言い忘れていましたが、全休した場所は勤続場所として加算されません。

では、何人かの引退した力士に当てはめて計算してみましょう。

稀勢の里の勤続加算金

地位基準額在位
場所数
支給額
横綱50万円12場所(全休4)400万円
大関40万円31場所1240万円
関脇・小結25万円22場所550万円
平幕20万円20場所400万円
十両15万円3場所45万円
総計88場所(全休4)2635万円

平成31年1月16日に引退を表明した稀勢の里の勤続加算金を計算してみましょう。

横綱を12場所務めた稀勢の里ですが、そのうち4場所は全休しています。もともと休場しない力士だった稀勢の里ですが、怪我の影響は勤続加算金にも如実に現れていますね。力士養老金と合わせると4135万円が定められた退職金となりそうです。

琴奨菊の勤続加算金

令和2年11月15日に引退を表明した琴奨菊の勤続加算金はこちら。
地位基準額在位
場所数
支給額
横綱50万円
大関40万円32場所1280万円
関脇・小結25万円20場所500万円
平幕20万円40場所800万円
十両15万円5場所75万円
総計97場所2655万円

日馬富士の勤続加算金

地位基準額在位
場所数
支給額
横綱50万円30場所(全休2)1400万円
大関40万円22場所880万円
関脇・小結25万円12場所300万円
平幕20万円13場所260万円
十両15万円4場所60万円
総計81場所(全休2)2900万円

平成29年12月現在、直近で引退した力士と言えば日馬富士ですが、勤続加算金を計算するとこのような結果になりました。

やはり横綱での1400万円というのは大きいですね。力士養老金と合わせると4400万円が定められた退職金となります。

魁皇の勤続加算金

次に大関として長くその地位にあり、また白鵬に破られるまでは歴代1位の勝利数だった魁皇の場合はどうでしょうか?

地位基準額在位
場所数
支給額
横綱50万円
大関40万円65場所(全休1)2560万円
関脇・小結25万円32場所(全休1)775万円
平幕20万円10場所200万円
十両15万円10場所(全休1)135万円
総計117場所(全休3)3670万円

大関で65場所(全休1場所)ともなると、その地位だけで日馬富士の総計に迫る勢いの2560万円にもなります!トータルでは横綱よりも多くの勤続加算金となり、力士養老金を合わせると4670万円でこれまた日馬富士より多いです。

若の里の勤続加算金

最後は元関脇・若の里の場合を見てみましょう。

地位基準額在位
場所数
支給額
横綱50万円
大関40万円
関脇・小結25万円26場所650万円
平幕20万円61場所(全休6)1100万円
十両15万円19場所285万円
総計106場所(全休6)2035万円

若の里の場合は関脇・小結での場所数もありますが、平幕での61場所(全休6場所)での1100万円も見逃せません。力士養老金と合わせると2798万円となりますね。

特別功労金

力士養老金と勤続加算金とは別に、横綱・大関には現役引退時に理事会の決議によって特別功労金が支給されます。金額の基準は明確ではなく、また支給額も非公表となっていますが推定では1億円前後とも言われています。

歴代の功労金はいくらぐらいか?

あくまで推定額ですが、歴代1位は元横綱・貴乃花(優勝22回)が1億3000万円(推定)、2位は元横綱・朝青龍(優勝25回)の1億2000万円(推定)。さらに優勝11回の元横綱・曙で1億円(推定)、優勝12回の元横綱・武蔵丸は9000万円(推定)らしいです。

支給額の算定に関しては、単純に優勝の回数というわけでもなく現役時の「相撲協会に対する貢献度」も評価されるようですね。

「円満引退」ではなくても貰える?

支給額歴代2位の朝青龍と言えば、平成22年(2010)1月に暴行問題が発覚、2月の理事会での事情聴取後に突然引退を表明して辞めたわけですが、この時も除名ではなく「自主的な引退」だったため、退職金とともに特別功労金も全額支給されました。

その後、暴行事件によって7月には書類送検された朝青龍ですが、平成22年10月には引退相撲や断髪式も通常通り行いました。これで分かるように「どのように辞めるか」はとても重要なようですね。

懸賞金からの積立金

以上の3項目は地位によって定められたものでしたが、実はもうひとつ支給されるものがあります。それは、現役時に獲得した懸賞金の中から積立られていたお金です。

懸賞金は1本7万円のうち、3万円が土俵上で渡され1万円が経費として協会に入ります。そして残りの3万円は協会が力士本人名義の積立金として管理して納税充当金として使用されます。この納税後の余剰金が引退時に「退職金」と併せて支給されることになるんです。

懸賞金が原資ということは、力士によって大きく差が出ることは想像に難くないですよね。ひと場所で多い者は300~500本(手取りで900~1500万円)も受け取ることがある懸賞金。納税後の余剰とは言え、力士によっては力士養老金や勤続加算金よりずっと大きな額になりそうです。

ここまでは関取の「退職金」をご紹介いたしました。次は幕下以下の場合を見てみましょう。

幕下以下には餞別を支給

幕下以下の力士(力士養成員)が引退する時には餞別が支給されます。標準金額が決められていますが、実際には在籍年数も考査して支給金額を決めているようです。ただし、三段目以下への支給は15場所以上在籍という条件が定められています。

幕下以下の餞別基準額
  • 幕下  20万円~
  • 三段目 10万円~
  • 序二段 7万円~
  • 序ノ口 7万円~

相撲協会からの支給は以上になります。実際には師匠や兄弟子からの餞別もありそうですが、いずれにしてもそれほど多い額ではなさそうですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。基本的には関取で在位実績がしっかりとした力士にしか「退職金」は手厚く支給されないようです。また、定められた金額は地位ごとにある程度順当な差がつけられていますが、場所数によっては下位の力士の方が多く貰えるケースもあり、長く相撲に貢献した力士に対して順当な制度とも言えそうです。

しかし、懸賞金の積立金という変動要素がかなり大きく、場合によってはベースの金額が霞むこともあり得そうです。これは給料のときにも言えることでした。

いやあ、面白かったですね。さて。退職金が分かったところで収入にも興味がある方はこちらの記事もどうぞ。

⇒ 【解説】力士の給料はいくら?年収を詳細解説



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