千秋楽が近づくと各段優勝とともに話題になるのが誰が三賞(さんしょう)を受賞するかですね。
三賞とは殊勲賞、敢闘賞、技能賞の3つを総称したもので、制定されたのは戦後まもなくの昭和22年(1947)11月場所からでした。
これは、戦後の相撲復興と発展を目的として考案されたもので、以降数々の名力士たちが受賞して今日まで続いています。因みに第一回の受賞者は、殊勲賞・出羽錦(出羽海部屋)、敢闘賞・輝昇(高島部屋)、技能賞・増位山(三保ヶ関~出羽海部屋)となっています。
このように歴史のある三賞ですが、それぞれの賞はどのような違いがあるのかはご存知でしょうか?
そこで今回は、この三賞の違いや受賞資格など大相撲の三賞について解説していきます。また、後半では歴代の三賞受賞者もご紹介いたします。
三賞の受賞資格
まずは基本的なところを整理しておきましょう。
三賞の選考対象は関脇以下の幕内力士が対象となっています。この中から特に成績が優れて相撲内容が芳しいと評価された「勝ち越し」力士が選考の前提条件になっています。
賞の発足当初は各賞1名ずつが原則でしたが、やがて原則に縛られることなく、大活躍した力士が複数の賞を受賞したり、優勝な力士が多かった場所では同じ賞を2人が受賞するケースも生まれてきました。また、逆に目ぼしい力士がいない場合には「該当者無し」ということもあります。
三賞選考委員会
三賞は誰が決めるのか?というと、これは「三賞選考委員会」という機関によって決定されています。
三賞選考委員会の委員数は45名以内で任期は1年となっており、相撲協会の審判委員、相撲記者クラブ員、維持員のうちから理事長が委託した者で構成されています。任期中に欠員が生じた場合でも補充されることはありません。
選考は千秋楽の幕内取組前に記者クラブで開催され、投票によって満場一致、または多数決によって三賞が決定します。前述のとおり「勝ち越し」が絶対条件になっているため、力士によっては「千秋楽の取組に勝ったら」という条件がつく場合があります。
三賞の賞金
三賞の賞金は各賞それぞれ200万円になっています。1人が複数の賞を受賞した場合にも賞ごとに賞金が授与されるので、ダブルで400万円、トリプル受賞なら何と600万円ということも!
また、1つの賞に複数の力士が選ばれた場合にも折半とはならずに、ちゃんと200万円ずつ支給されます。
三賞の受賞基準
次は三賞それぞれの受賞基準を見ていきましょう。前提条件としては、関脇以下の幕内力士で勝ち越した者が対象となります。
殊勲賞
横綱・大関を倒すか、幕内優勝に関係ある勝ち星を挙げた成績優秀な力士のなかから選出されます。
「幕内優勝に関係ある勝ち星」とは、例えば優勝力士が14勝1敗であった場合には、その1敗が「優勝に関係ある勝ち星」となります。つまり、優勝力士に黒星をつけた力士が選考対象となるのです。
勝ち越しが前提となるので、横綱から金星をあげても負け越した場合には選考対象にはなりません。また、「大関からの勝利」も選考基準としてあるのですが、大関の力量が下がっている為なのか、近年ではこれを理由に選ばれることは減っています。
「優勝力士から勝ち星を挙げる」ことが選考基準となっていますが、関脇以下の力士自身が優勝した場合にも受賞することがあります。最近では平成30年(2018)1月場所での栃ノ心の優勝が記憶に新しいですね。
敢闘賞
敢闘賞は「敢闘精神旺盛で」成績優秀な者の中から選出されます。「敢闘精神」というなんとも曖昧な表現で対象者が分かりづらいですが、位置づけとしては好成績ではあるが殊勲賞にも技能賞にも選出しにくい力士となるようです。
例えば、優勝同点や次点の力士、または新入幕やベテランで活躍した力士などに贈られており、三賞のなかでは最も幅の広い賞となっています。
技能賞
技能賞は「技能が特に優れた力士」の中から選出されます。技能とは決まり手の数だけではなく、相撲の基本である「寄り、押し、投げ、立ち合い」なども対象となっています。つまり、力士の模範となるような基本に忠実な型をもった力士が選ばれるのです。
この、「相撲の基本に忠実であることも技能である」というのは言われてみればなるほどですが、一般に思う技能のイメージとはかけ離れているかもしれません。
一般的に「技能」から連想される相撲とは、決まり手の豊富さや、個性的で「観ていて面白い相撲」が思い浮かぶのではないでしょうか。
近年では、平成29年(2017)5月場所で11勝をあげる大活躍をみせ、またその変幻自在の相撲ぶりから観客を大いに沸かせた宇良ですが、この場所で技能賞を受賞出来なかったことが話題になりました。
解説者の北の富士さんも「11番とってあげないの?そりゃないよ」とコメントしていましたが、その翌場所から怪我をして番付を下げた宇良のことを考えると、なおさら技能賞を受賞して欲しかったなあと思います。
この技能賞は、その選考基準の厳しさから該当者無しになることも多く、晴れて受賞が叶った受賞者にとっては高いステータスとなっています。
受賞の傾向
勝ち越しが前提条件となっている三賞ですが、8勝での受賞は近年減っており、10から11勝以上という高い成績が必要になってきています。また、場所の皆勤は条件として規定されてはいませんが、三賞が制定されてから長らく途中休場した力士から選ばれたことはありませんでした。平成31年初場所を7日目から途中休場(11日目から再出場)した御嶽海が殊勲賞を獲得したのが初の事例となります。
前述した通り、三賞の選考は千秋楽の幕内取組前に行われているため、千秋楽に勝ち越しがかかった力士や、二桁目前の場合などには「千秋楽で勝ったら」という条件が付くことがあります。また、三賞受賞候補者同士の対戦が千秋楽に組まれている場合もあり、この時は優勝決定戦のような緊迫感のある相撲を見ることが出来ます。
歴代の三賞受賞者
ここで歴代の受賞者をご紹介しましょう。
三賞のトッピクス
三賞受賞回数TOP7
1度の受賞でも名誉な三賞ですが、三賞の常連とも呼べる力士をご紹介しましょう。
名力士がずらりと並んでいますが、三賞受賞の前提条件が「関脇以下の」力士なので、スピード出世で大関や横綱になった者は概して三賞受賞回数は少なくなり、このリストにはランクインしてきません。
1位の安芸乃島は三賞のみならず、金星も16個で歴代最多なのですが、本人はこの数字に価値を見出していないようで、三賞と金星が多いのは大関にもなれずに平幕や関脇在位が多かったからで「恥ずかしいぐらいの数字」と思っているそうです。
でも、やはり凄いことですよね。コンスタンスに好成績をあげ、ファンの記憶に残る相撲を取っていた証ではないでしょうか。
また、敢闘賞が多い貴闘力や技能賞に突出した鶴ヶ峰。そして上位力士を苦しめた魁皇に朝潮の殊勲賞など、それぞれの受賞傾向から力士の特色が見えてくるのも面白いですね。
トリプル受賞は6人
1場所で三賞すべてを受賞した力士は過去に6人います。
通常、三賞の選考は一人の力士に賞が集中しないようになっており、「技能賞に選ばれなかったら敢闘賞を」というように配分される傾向にあるのですが、トリプル受賞というのはそれを凌駕するほどの活躍を見せた証となりますね!
まとめ
いかがでしたでしょうか。誰が優勝するのかも気になる大相撲ですが、三賞にも注目してみると更に相撲観戦が楽しくなりますよ。受賞予想なども楽しそうですね!