大相撲の金星とは?獲得条件や給料・褒賞金の増額と銀星との違いを解説

大相撲用語解説。今回は「金星(きんぼし)」について解説します。

平幕力士が最高峰の横綱を土俵際で破り、大歓声が沸き起こる劇的な瞬間。相撲界で「金星を挙げる」とは一体どのような条件を満たした勝利を指すのでしょうか。金星を獲得した力士の給料(力士褒賞金)がアップする驚きの仕組みから、不戦勝や反則勝ちでの例外規定、「銀星」との違いまで分かりやすく紐解きます。

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大相撲の「金星(きんぼし)」とは

大相撲における「金星(きんぼし)」とは、幕内の平幕力士(前頭)が本場所の取組で最高位の「横綱」と対戦して勝利することを指す言葉です。

日本相撲協会の公認規定(寄附行為施行細則など)の条文自体には「金星」という名称は直接使われていません。しかし、番付の頂点に君臨する横綱を倒した極めて価値のある殊勲の白星として、制度上も力士に大きな名誉と特別な手当が与えられます。

「金星」という言葉は大正時代から相撲界やファンの間で使われ始め、昭和5年(1930年)1月場所から正式に力士褒賞金の昇給対象として制度化されました。現在では一般社会でも「大番狂わせで格上の強敵に勝つこと」や「めったにない大きな手柄を立てること」の慣用句として広く定着しています。

金星の資格は「平幕力士(前頭)」だけ!三役や大関は対象外

金星を獲得できるのは、あくまで幕内の「平幕力士(前頭)」だけです。

小結、関脇といった「三役」や「大関」の力士が横綱を倒した場合は、金星とは呼ばれず、単なる「白星」として扱われます(中継などでは「殊勲の星」と称えられます)。

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三役以上の力士は「横綱と互角に渡り合って勝つことが当然期待される上位陣」とみなされるため、平幕のような特別な昇給特典は与えられません。金星とは、あくまで地位が下の平幕力士が土俵の頂点に君臨する横綱を倒したときにだけ与えられる「大金星」の称号なのです。

金星がつかない例外ルール(不戦勝・反則勝ち・優勝決定戦)

平幕力士が横綱と対戦して勝利した場合であっても、取組の決着のつき方や状況によっては「金星」と認められない例外規定が存在します。

「不戦勝」では金星にならない

対戦相手の横綱が休場して「不戦勝」となった場合、白星は記録されますが金星としては認められません。土俵上で実際に相撲を取って勝つことが絶対条件だからです。

「反則勝ち」でも金星にならない

土俵上で相撲を取った場合であっても、横綱の髷(まげ)掴みなどの禁じ手による「反則勝ち」となった場合は金星になりません

  • 平成15年(2003年)7月場所:横綱・朝青龍が前頭2枚目・旭鷲山の髷を引っ張って反則負けを喫した際、旭鷲山への金星適用は見送られました。反則勝ちによる金星適用の前例がなかったため、相撲協会も扱いに困り、正式に「金星不適用」を発表するまでに5日を要したという逸話も残されています(『大相撲ジャーナル』2014年12月号より)。
  • 平成26年(2014年)9月場所:横綱・日馬富士が前頭3枚目・嘉風の髷を掴んで反則負けとなった際にも、前例通り嘉風に金星はつきませんでした。

なお、相手の足が土俵の外へ先に出てしまう「勇み足」などの勝負結果(非技)によって勝利した場合は、正規の取組上の決着として金星が認められます。非技(勇み足)の詳しい決まり手ルールについては、以下の解説記事をご覧ください。

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「優勝決定戦」での勝利も金星にならない

本割(15日間の本場所)を終えて同点となった際に行われる「優勝決定戦」で平幕力士が横綱を破った場合も、金星にはカウントされません。

優勝決定戦の勝敗は、幕内最高優勝の行方を決めるためだけのものであり、力士の持ち給金や番付編成の計算対象外と定められているためです。

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金星を獲得すると給料(力士褒賞金)が上がる仕組み

金星を挙げた力士には、名誉だけでなく極めて大きな金銭的恩恵が与えられます。相撲界で「金星を1つ取れば一生の財産になる」と言われるのは、力士褒賞金の仕組みに理由があります。

持ち給金が「10円」加算される

金星を1個獲得するごとに、その力士の「持ち給金(力士褒賞金の支給標準額)」が10円加算されます。

通常の勝ち越し星(勝ち数が負け数を上回った分)で加算される持ち給金は1番につき「50銭(0.5円)」です。つまり、金星1個の価値は通常の勝ち越し星「20番分」に相当するという破格の評価が与えられているのです。

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勝ち越し星と持ち給金の関係については、以下の解説記事をご覧ください。

4,000倍されて「年24万円」が生涯底上げされる!

日本相撲協会の規定では、本場所ごとに支給される力士褒賞金は「支給標準額(持ち給金)の4,000倍」と定められています。

したがって、金星1個によって増額される力士褒賞金は以下の計算式になります。

10円 × 4,000倍 = 40,000円(本場所ごと)

金星を1個挙げるだけで、翌場所から支給される力士褒賞金のベース(基準額)が毎場所4万円(年6場所で24万円)底上げされます。そして大相撲の給与システムにおいて最も決定的なのは、一度増額された持ち給金は、その後にどれだけ負け越しても現役を引退するまで減額されることが一切ないという点です。

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たとえ金星を獲得したその場所に負け越してしまっても、金星分の4万円昇給は確実に適用されます。現役生活が10年続けば、金星1個だけで生涯の受取額が「240万円」増える計算になります。関取たちが死に物狂いで横綱の首を狙いに行く最大のモチベーションがここにあります。

力士の給料や手当の全容については、以下の記事で詳しく解説しています。

大関を倒す「銀星(ぎんぼし)」との違い

相撲ファンの間や報道では、平幕力士が大関を破った際に「銀星(ぎんぼし)」という言葉が使われることがあります。

しかし、この「銀星」は日本相撲協会が定めた正式な制度ではなく、新聞社やテレビなどの報道関係者が生み出したマスコミ用語(造語)です。

  • 金星(横綱撃破):持ち給金が10円加算され、本場所ごとに4万円が一生増額される。
  • 銀星(大関撃破):相撲協会の公式記録には残らず、持ち給金の増額も一切ない

このように、銀星には金銭的なプラスは一切ありません。そのため、公共放送であるNHKの大相撲中継などでは「銀星」という俗称は使われず、「殊勲の白星」「大関を破る殊勲」といった客観的な表現が用いられます。ただし、大関を倒した平幕力士はその場所で勝ち越せば三賞(殊勲賞)の有力候補となるため、番付昇進や名誉の面では大きな意味を持ちます。

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金星にまつわるエピソードと歴代記録

土俵上のドラマを彩ってきた金星には、多くの輝かしい大記録や相撲界独特の文化が残されています。

歴代最多記録は安芸乃島の「16個」

大相撲史上、最も多くの金星を獲得したのは、平成初期に「横綱キラー」として土俵を沸かせた元関脇・安芸乃島(現・高田川親方)です。

安芸乃島は、千代の富士、北勝海、大乃国、旭富士、曙、武蔵丸という実に6人の横綱から通算16個の金星を奪い取りました。これは持ち給金に換算すると「160円分(毎場所64万円・年間384万円の加算)」という驚異的な金額に達します。

歴代の金星獲得上位力士は以下の通りです。

  • 1位:安芸乃島 勝巳(16個)
  • 2位:高見山 大五郎(12個)
  • 2位:栃乃洋 泰一(12個)
  • 4位:土佐ノ海 敏生(11個)
  • 5位:出羽錦、鶴ヶ嶺、安念山、北の洋、巨砲(各10個)

最年少記録は貴花田の「18歳9か月」

金星獲得の最年少記録を持つのは、後に平成の大横綱となる元横綱・貴乃花(当時・前頭筆頭の貴花田)です。

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平成3年(1991年)5月場所初日、18歳9か月の貴花田は、大横綱・千代の富士を気迫あふれる寄り切りで破り、史上最年少金星を達成しました。この一番をきっかけに千代の富士が翌々日に現役引退を表明した劇的な世代交代劇は、相撲史に残る伝説の名勝負として今なお語り継がれています。

相撲界の隠語としての「金星」

土俵上の大金星から転じて、相撲界の独特な隠語として「美人(美しい女性)」のことを「金星」と呼ぶ伝統があります(『相撲大事典』にも記載)。

「あいつは金星を射止めた(美人の奥さんをもらった)」というように使われ、力士たちにとって魅力的な女性や、出会うと勝負運が上がるような女性を象徴する華やかな言葉となっています。

「金星」のまとめ

大相撲の「金星」は、平幕力士が土俵の絶対王者である横綱を倒したときにだけ与えられる最高の栄誉です。

持ち給金10円(1場所4万円)が生涯にわたって保証されるという絶大な恩恵は、実力至上主義の大相撲において「人生を変える1勝」としての重みを持ちます。不戦勝や反則勝ちを認めない土俵の潔さや、マスコミ用語である銀星との違いを知ることで、本場所で横綱に挑む平幕力士たちの立ち合いの緊迫感をより深く味わうことができるはずです。

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他にも気になる相撲言葉が調べたいときは、大相撲用語事典へぜひどうぞ。

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