大相撲の給金とは?持ち給金の計算方法は?正式名称「力士褒賞金」を徹底解説

大相撲用語解説。今回は「給金(持ち給金)」について解説します。

相撲中継で耳にする「給金相撲」や「給金を直す」という言葉。力士たちにとって「給金」とは一体何を指し、どのように金額が決まるのでしょうか。正式名称である「力士褒賞金」との関係から、持ち給金が増える仕組み、4,000倍の計算方法まで分かりやすく解説します。

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大相撲の「給金(きゅうきん)」とは

大相撲で一般に「給金(きゅうきん)」、あるいは「持ち給金(もちきゅうきん)」と呼ばれているものは、日本相撲協会の正式な制度上では「力士褒賞金(りきしほうしょうきん)」、およびその算定基準となる「支給標準額」を指します。

力士が受け取る金銭には、日本相撲協会から毎月支給される「月給(基本給)」がありますが、給金(力士褒賞金)はそれとは全く別個に、本場所(年6回)ごとに支給される実績給・成果報酬です。

土俵で勝ち星を積み重ねたり、金星や優勝などの大きな手柄を立てたりすることでベースとなる金額が上がっていく、実力至上主義の大相撲を象徴するシステムとなっています。

なぜ「給金」と呼ぶのか?江戸時代からの歴史的由来

現代の大相撲協会の公認規定(寄附行為施行細則など)では「力士褒賞金」という名称が使われていますが、相撲界やファンの間では今なお「給金」という呼び名が定着しています。

この呼び名は、江戸時代の勧進相撲に由来しています。当時、興行全体の収益金に応じて力士たちに分配されていた取り分を「歩方(ぶかた)」と呼んでいました。これに対し、本場所での取組成績に応じて加算され、昇給していく支給金のことを「給金」と呼んでいたのです。

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その後、昭和の時代に制度が近代化され「力士褒賞金」と改称された後も、伝統的な呼び名である「給金」や「持ち給金(持ち高)」という言葉がそのまま受け継がれ、現在も広く使われています。

「持ち給金」が増える仕組みと加算ルール

給金(力士褒賞金)の計算ベースとなる金額を「持ち給金(支給標準額)」と呼びます。持ち給金は「円」の単位で表され、力士人生の歩みとともに以下のように加算されていきます。

新弟子は全員「3円」からスタート

新弟子検査に合格し、前相撲を経て晴れて「序ノ口」に番付が載った力士は、出世の第一歩として一律に3円の持ち給金が与えられます(幕下付出や三段目付出で初土俵を踏む力士も同様に3円からスタートします)。

土俵の成果による加算ルール

本場所の土俵で結果を出すごとに、力士の持ち給金には所定の金額が上乗せされます。

  • 勝ち越し星:1番につき「50銭(0.5円)」
    本場所で勝ち越した場合、勝ち数が負け数を上回った分の白星(勝ち越し星)1つにつき50銭が加算されます(例:8勝7敗なら50銭、10勝5敗なら2円50銭)。
  • 金星(横綱撃破):1個につき「10円」
    平幕力士が横綱を倒して金星を獲得すると、一気に10円が加算されます。これは通常の勝ち越し星「20番分」に相当する破格の評価です。
  • 幕内最高優勝(全勝以外):1回につき「30円」
    本場所で幕内最高優勝(14勝1敗など)を果たすと、30円が加算されます。
  • 幕内最高優勝(全勝優勝):1回につき「50円」
    15戦全勝で幕内最高優勝を達成した場合は、特例として50円が加算されます。

一度増えた持ち給金は「生涯減額されない」

大相撲の給金システムにおいて極めて特徴的なのは、土俵の成績によって一度加算された持ち給金は、その後にどれだけ負け越しても現役を引退するまで減額されることが一切ないという点です。

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たとえ翌場所に大敗したり、怪我で全休したりしても、過去に積み上げた持ち給金のベースが削られることはありません。力士たちが勝ち越しや金星に命懸けで挑むのは、それが生涯にわたって保証される「一生の財産」になるからです。

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持ち給金が「4,000倍」されて支給される計算式

本場所ごとに実際に力士の手元へ支給される力士褒賞金の金額は、日本相撲協会の規定により「支給標準額(持ち給金)を4,000倍した金額」と定められています。

したがって、土俵の成果によって増額される実際の受取額は以下のようになります。

  • 勝ち越し1番(50銭):0.5円 × 4,000倍 = 2,000円(年6場所で1万2,000円底上げ)
  • 金星1個(10円):10円 × 4,000倍 = 40,000円(年6場所で24万円底上げ)
  • 幕内最高優勝(30円):30円 × 4,000倍 = 120,000円(年6場所で72万円底上げ)
  • 全勝優勝(50円):50円 × 4,000倍 = 200,000円(年6場所で120万円底上げ)

支給割合(倍率)の歴史的変遷

持ち給金に掛け合わされる倍率は、物価の上昇や相撲協会の財政状況に合わせて時代とともに改定されてきました。

  • 昭和44年(1969年)まで:1,000倍
  • 昭和45年(1970年)〜:1,500倍
  • 昭和60年(1985年)〜:2,500倍
  • 平成10年(1998年)1月場所〜:4,000倍(現行)

平成10年の改定以降、現在に至るまで「4,000倍」の基準が維持されています。

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地位ごとの「最低保障(最低支給標準額)」と昇降格ルール

十両以上の関取には、番付の格式を維持するため、地位ごとに「最低支給標準額(最低保障)」が設定されています。

地位ごとの最低支給標準額一覧

  • 十両:持ち給金 40円(最低支給額:1場所 16万円)
  • 幕内(平幕・小結・関脇):持ち給金 60円(最低支給額:1場所 24万円)
  • 大関:持ち給金 100円(最低支給額:1場所 40万円)
  • 横綱:持ち給金 150円(最低支給額:1場所 60万円)

例えば、幕下から十両へ新昇進した際、それまでに積み上げた持ち給金が20円しかなかった力士であっても、関取の最低保障として「40円」まで底上げされ、毎場所最低でも16万円の力士褒賞金を受け取ることができます。

番付が下がった場合はどうなる?「下駄を履かせた差額分」のルール

成績によって実力で加算された持ち給金は生涯減額されませんが、「地位の昇進によって底上げされた差額分(制度上、下駄を履かせてもらった分)」だけは、その地位から降格した際に差し引かれるという明確なルールがあります。

例えば、持ち給金45円で幕内(最低保障60円)に新昇進した力士を考えてみましょう。

この力士は、幕内に上がったことで15円分「下駄を履かせてもらい」、幕内在位中は60円分(1場所24万円)が支給されます。そして、もし幕内在位中に8勝7敗と勝ち越して持ち給金が50銭増え、実力持ち給金が「45.5円」になった後に十両へ陥落したとします。

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この場合、幕内昇進時に底上げされた差額(15円分)だけが差し引かれ、支給額は本人の実力持ち給金である「45.5円(1場所18万2,000円)」に戻ります(十両の最低保障40円を上回っているため、45.5円分がそのまま支給されます)。

つまり、幕内在位中に純粋に勝ち越して自力で増やした給金はそのまま生涯残り、あくまで昇進時に底上げされた一時的な差額分だけが減額されるという極めて合理的で実力本位の仕組みになっています。

幕下以下の力士養成員の扱い

幕下、三段目、序二段、序ノ口の力士養成員にも、序ノ口出世時の3円や勝ち越しによる50銭の加算計算は厳密に行われています。ただし、力士養成員のうちは場所ごとの褒賞金支給はありません

十両に昇進して初めて関取の権利を獲得し、それまで下積み時代にコツコツと積み立ててきた持ち給金が、実際の給金(褒賞金)として一気に花開く仕組みになっています。

力士の給料や手当全体のシステムについては、以下の解説記事をご覧ください。

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給金にまつわる相撲界の伝統と文化

「給金」という言葉は、相撲界の勝負の世界や日常の文化にも深く根づいています。

「給金相撲」「給金直し」「向こう給金」

力士がその場所で勝ち越し(関取は8勝目、幕下以下は4勝目)を決める取組のことを、相撲界では古くから「給金相撲(きゅうきんずもう)」と呼びます。

勝ち越すことで持ち給金が50銭増額され、力士としての生涯給与ベースが上がることから生まれた言葉です。そして、その一番に勝って勝ち越しを決めることを「給金を直す(給金直し)」と言います。

逆に、負け越してしまうことは、給金が相手側(向こう側)へ行ってしまうという意味を込めて、俗に「向こう給金(むこうきゅうきん)」と表現されることもあります。

歴代最高記録は大横綱・白鵬の「2,187円」

大相撲の歴史の中で、最も多くの持ち給金を積み上げたのは、歴代最多45回の幕内優勝を誇る第69代横綱・白鵬です。

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白鵬が現役を引退した令和3年(2021年)9月場所終了時点での持ち給金は、実に2,187円に達していました。これを現行の4,000倍で計算すると、本場所ごとに支給される褒賞金の額は以下のようになります。

2,187円 × 4,000倍 = 8,748,000円(本場所ごと)

白鵬は、通常の基本月給とは別に、年6回の本場所ごとに約874万8,000円(年間で約5,248万円)もの給金(褒賞金)を受け取っていました。まさに土俵の強さがそのまま生涯の富へと直結する、実力の世界を象徴する偉大な金字塔です。

「給金」のまとめ

大相撲の「給金」は、正式には「力士褒賞金(支給標準額)」と呼ばれ、江戸時代の歩方制度から続く大相撲最古のインセンティブ(成果給)システムです。

勝ち越し星ごとの50銭、金星の10円、優勝の30円・50円という地道な積み重ねが4,000倍され、引退するまで生涯減額されない給金ベースとなって力士の生活を支えます。番付降格時でも自力で勝ち取った加算分は守られるという徹底した実力主義のなかに、土俵に人生を懸ける力士たちの汗と情熱がそのまま宿っています。

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他にも気になる相撲言葉が調べたいときは、大相撲用語事典へぜひどうぞ。

また、当サイトでは出身地別、力士別、初土俵別など様々な方法で力士データをまとめています。

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