現在の大相撲では、際どい勝負は「取り直し」となって必ずどちらかが勝つまで相撲を取りますが、実は「引き分け」になるルールも存在しているのをご存知でしょうか。
今回は、大相撲における「引き分け(ひきわけ)」の歴史と、現在でも引き分けになる極めて稀な2つの条件について解説します。
引き分け(ひきわけ)とは
大相撲における「引き分け」とは、勝負がつかないまま、その取組を中止して両者引き分けとすることです。略して「分け」とも呼ばれます。
江戸時代から明治時代にかけては、相撲が長引いた場合によく適用されていましたが、大正14年(1925年)11月に「取り直し制度」が導入されたことで、かつて存在した「預かり」という判定とともに原則として廃止されました。
しかし、一般のスポーツでいうルールブックにあたる「相撲規則(勝負規定)」から完全に消滅したわけではなく、現在でも以下の2つの特殊なケースにおいてのみ「引き分け」とされる規定が残っています。
現在でも「引き分け」になる2つの条件
①取組中の負傷による「痛み分け」
取組中に力士が負傷してしまい、相撲の続行が不可能になった場合や、物言いがついて「取り直し」になったものの、怪我によって取り直しに出場できない場合などに適用されるのが「痛み分け(いたみわけ)」です。
これは引き分けの一種として扱われ、星取表にも引き分けとして記録されます。
②水入りを繰り返す「二番後取り直し」
両者の実力が完全に拮抗し、どうしても勝負がつかない場合に適用される究極の引き分けルールです。以下の手順を踏んでなお決着がつかない場合に「引き分け」となります。
- 相撲が長引いて力士が疲労したため、行司が勝負を止める(水入り)。
- 再開後もさらに勝負がつかない場合、いったんその取組を中断する。
- その間に別の力士の取組を2番(二番)行い、力士を休ませる。
- 2番の取組が終わった後、再び土俵に上がって相撲を取り直す。これが「二番後取り直し(にばんのちとりなおし)」です。
- この二番後取り直しを行ってもさらに勝負がつかなかった場合、最終的に「引き分け」となります。
この二番後取り直しで引き分けとなった場合、行司は土俵上で「双方とも取り疲れましたるゆえ、引き分け預かりおきます」という非常に珍しい口上を述べて勝負を収めます。
幻の「引き分け」
現代の力士たちはスタミナも攻め手も豊富であるため、二番後取り直しによる引き分けは数十年に一度起こるかどうかの、まさに「幻の判定」となっています。もし大相撲中継でこの判定を見ることができれば、それは歴史的な瞬間に立ち会えたと言えるでしょう。
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