大相撲の「懸賞旗(懸賞幕)」とは?制作方法と金額、呼出がみせる働き

大相撲用語解説。今回は「懸賞旗(けんしょうばた)」について解説します。

人気力士の取組前、色鮮やかな旗を持った人たちが土俵上をぐるぐると回る光景を見たことはありませんか?あの旗のルールや、NHK中継には映らない裏事情、名物スポンサーの逸話まで詳しくご紹介します。

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懸賞旗(懸賞幕)とは

大相撲における「懸賞旗(けんしょうばた)」とは、取組に懸賞(賞金)を提供したスポンサーの企業名や商品名、ロゴなどが鮮やかに染め抜かれた布製の旗のことです。

一般のファンからは「懸賞幕(けんしょうまく)」と呼ばれることも多いですが、相撲界では主に「懸賞旗」と呼ばれます。原則として中入後(なかいりご)の「幕内(まくうち)」の取組でのみ見られる光景であり、十両以下の取組には懸けられません。

幕内の取組において、力士の呼び上げが終わった直後、進行役である「呼出(よびだし)」がこの旗を掲げて土俵上を1周し、観客に向けてスポンサーを大々的にアピールします。

懸賞旗のサイズと制作

懸賞旗はどんな形でも良いわけではなく、一定の規格が決まっています。

  • サイズ:縦120センチ、横70センチ
  • 装飾:上部に木の棒を通し、下部には金色のモール(フサ飾り)を付ける

これらの懸賞旗は日本相撲協会が用意するのではなく、スポンサー側で制作して協会に持ち込むルールとなっています。そのため、旗の制作費はすべてスポンサー側の負担となります。制作会社は特に指定はないようですが、老舗の専門業者などに依頼して作るのが一般的です。

懸賞を出すにはいくらかかる?

企業や法人は、自社が応援している力士や、希望する取組を指定して懸賞を懸けることができます。

現在は協会に納める懸賞金が1本につき7万円と定められており(※金額は時代によって改定されます)、原則として1場所(15日間)を通じて、指定した同じ力士や取組などに毎日懸けることが求められます。

また、スポンサー負担となる旗の制作費は、製作会社やデザイン、使う色数などにより違いがありますが、相場としては1枚につき3万〜6万円程度のようです。さらに手数料等が加わるため、旗1枚を用意するのに総額でおおよそ10万〜16万円ほどかかることが多いようです。

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そのため、懸賞を出すには最低でも「懸賞金(7万円×15日間=105万円)+旗の制作費等の諸経費」がかかる計算になります。

※懸賞金のシステムや、勝った力士が受け取る「手取り金額」の仕組みなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。

呼出が土俵を回る際の作法と裏方の働き

懸賞旗を持って土俵を回ることは、呼出の重要な仕事の一つです。美しく見せるための所作や、裏方としての緻密な準備があります。

① 東から上がり「反時計回り(左回り)」に1周する

東方力士の呼び上げが終わった後、呼出は東の控えから土俵に上がり、必ず「反時計回り(左回り)」に土俵を1周して、西の控えへと下りていきます。

結びの一番などで懸賞の数が非常に多い場合は、数十人もの呼出が連なって土俵を回る壮観な光景を見ることができます。さらに本数が多く、呼出の人数が足りない場合は、土俵を1周し終えた呼出が裏で別の懸賞旗に取り替えてからもう1周回ったり、時間差で土俵に上がったりするという臨機応変な対応をとることもあります。

② 旗を「見せる」職人技の工夫

旗を持つ手の位置は、「右手が上、左手が下」と決まっています。

呼出は土俵を回りながら、スポンサーの社名や商品名が観客席から一番よく見えるように、旗の面を少しだけ「外側(客席側)」に傾けて持っています。歩く振動で旗がブレないよう、姿勢を正してすり足気味に歩く姿は、裏方の細やかな心遣いの表れです。

③ 花道奥での緻密な準備

観客の目には触れにくいですが、土俵上で美しく旗を回す裏では若手呼出たちの奮闘があります。

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彼らはその日の取組表と照らし合わせながら、倉庫から出番となる懸賞旗を順番通りに引っ張り出し、花道の奥にずらっと並べて事前の準備をしておくのです。本数が膨大になる取組では、若手たちが協力し合い、出し間違いや順番の間違いがないよう緻密に管理しています。

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会場観戦の醍醐味!「場内アナウンス」と「取組表」

大相撲のテレビ中継を見ていると、呼出が懸賞旗を持って回り始めた途端にカメラが引きの映像(遠景)になり、画面上に「過去1年間の対戦成績」などのテロップが被せられます。これは、公共放送であるNHKが広告放送を禁止した「放送法第83条」に抵触する恐れがあるためです。映像だけでなく、場内のスポンサー読み上げ音声も意図的に絞られています。

しかし、会場観戦(現地観戦)では、企業名だけでなくユニークなキャッチコピーのアナウンスを存分に楽しむことができます。これは会場に足を運んだファンならではのおすすめの楽しみ方です。(※日本相撲協会の公式インターネット配信等でもそのままの音声を聞くことができます)

【豆知識】取組表でキャッチコピーを事前チェック!

さらに知っておきたい豆知識として、観戦時に入場口で配られる「取組表」や、日本相撲協会公式サイトで公開されているPDF版の取組表には、どの取組にどのスポンサーが懸賞を出しているかだけでなく、実際に読み上げられる「アナウンス文章(キャッチコピー)」まで詳しく記載されています。会場でこの取組表を見ながらアナウンスに耳を傾けると、相撲観戦の面白さが格段にアップします。

話題を呼んだ名物スポンサーと懸賞旗

同一企業が一つの取組に対し、複数の懸賞を懸けることも可能です。全く同じ懸賞旗と場内放送が連続して流れることもあり、過去にはユニークな事例がいくつも誕生しています。

  • 永谷園(5本連続の連呼):古くは人気力士だった高見盛(現・東関親方)から、最近では遠藤や熱海富士などの取組に複数の懸賞を懸け、「さけ茶づけ、梅干茶づけ、たらこ茶づけ…」と商品名を連呼させる場内放送が名物です。懸賞旗も実際の商品パッケージがデザインされています。
  • ポール・マッカートニー:平成25年(2013年)11月場所で、自身の新アルバム宣伝のために臨時で懸賞を提供。「ポール・マッカートニー『NEW』発売中!」という放送が5回連続で館内に響き渡り、大きな話題を呼びました。
  • ポケットモンスター(ポケモン):25周年を機に令和3年(2021年)11月場所から登場。翌年には1場所あたり250本以上という過去最高クラスの懸賞を懸ける「大口スポンサー」となりました。人気キャラクターが描かれた懸賞旗は子どもたちからも大人気です。
  • ちいかわ:SNS発の人気キャラクター「ちいかわ」も懸賞旗に登場して話題を呼びました。愛らしいキャラクターが大きく描かれたデザインの旗が土俵を回る光景は、相撲ファンだけでなくネット上でも大きな反響がありました。
  • 森永賞(ファン投票による特別な懸賞):東京場所限定で、観客が森永製品の空き箱を使って「今日の注目の一番」に投票し、選ばれた取組に懸けられる歴史ある懸賞です。土俵上を回る際、森永賞の懸賞旗は必ず一番最後を歩き、前の呼出から少し距離を離して披露されるという特別な決まりがあります。

この他にも、集英社(相撲漫画『火ノ丸相撲』の宣伝)や民放テレビ局の番組宣伝、お馴染みの「高須クリニック」「伯方の塩」など、多種多様な企業が懸賞旗を出しています。

「懸賞旗(懸賞幕)」のまとめ

懸賞旗(懸賞幕)は、大相撲の興行を支えるスポンサーと力士を繋ぐ華やかなシンボルです。

取組前の緊張感が高まる中、呼出たちが一糸乱れぬ作法で色鮮やかな旗を掲げて回る光景は、現代の大相撲に欠かせないエンターテインメントの一つです。次に観戦する際は、個性的な旗のデザインや、呼出の裏方としての工夫、そして現地ならではのアナウンスにぜひ注目してみてください。

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