大相撲用語解説。今回は相撲の解説や書籍などで時折目にする「飛び付き(とびつき)」という言葉について解説します。
現在では主に過酷な稽古方法の一つとして知られていますが、実は花相撲や昔の「前相撲」など、時代や場面によって複数の意味を持つ興味深い相撲用語です。
この記事の目次
1. 稽古方法としての「飛び付き」
現在「飛び付き」というと、まず指すのは相撲の過酷な稽古方法のひとつです。
この稽古は、どの力士が相撲を取るかなどの順番を一切決めず、我先にと土俵に入っていき、仕切りをせずにいきなり対戦して行われます。
積極的に前へ出なければ土俵で相撲を取ることはできず、周囲で見守るだけでその日の稽古が終わってしまいます。技術だけでなく、強靭なハングリー精神も養われる稽古と言えます。
昔は序二段以下だけで40~50人もいるような大部屋もあり、いちいち仕切りをしていては時間がいくらあっても足りませんでした。そのため、一番でも多く相撲を取ろうと、わあっと土俵にもみ合うように入っていく「飛び付き」ばかり行われていた時代もあったようです。
申し合い(もうしあい)との違い
相撲の稽古には、同じように順番を決めずに行われる勝ち抜き戦形式の「申し合い」というものがあります。
飛び付きと申し合いの決定的な違いは、申し合いはしっかり「仕切り」をしてから取り組むという点です。
申し合いでは、勝った力士が土俵に残り、負けた力士は土俵を降ります。そして、勝者が次に戦う相手を指名して稽古が続いていきます。
2. 花相撲の余興としての「飛び付き」
「飛び付き」という言葉は、巡業や福祉相撲、引退相撲などの「花相撲(はなずもう)」でも耳にする機会があります。
初切りや相撲甚句、太鼓の打分けなど、本場所では見られない特別な催しが楽しめる花相撲において、相手を連続して五人負かす「飛び付き五人抜き」という余興が行われることがあります。ここでも「仕切りなしで行われる勝ち抜き戦」という意味合いで「飛び付き」という言葉が使われています。
3. 前相撲の別称としての「飛び付き」
現在では稽古や花相撲でしか見られない飛び付きですが、昔は本場所(の土俵上)でも見ることができました。と言っても幕内などの本割ではなく、「前相撲」でのことです。
現在の前相撲は仕切りを1回してから対戦しますが、昔は仕切りをせずにいきなり立ち合って取り組んでいました。この歴史的な背景から、前相撲や、前相撲を取る新弟子力士のことを「飛び付き」と呼ぶこともありました。
なぜ前相撲の飛び付きは廃止されたのか?
昔は年間の場所数が少なく、力士を志す若者も非常に多かったため、前相撲を取る新弟子が溢れていました。そのため、時間を短縮できる「飛び付き方式」が採用されていました。
- 昭和19年(1944年)夏場所: 戦局の悪化で新弟子の数が減り、仕切りを1回するように改められる。
- 戦後: 新弟子が増加し、一時的に飛び付きが復活。
- 昭和40年代の終わり頃: ふたたび新弟子が減少し、また「仕切りなしでぶつかる飛び付きは危険である」という安全面での議論も影響し、完全に廃止。
これ以降、前相撲でも仕切りを1回行う現在の形式が定着しました。
「飛び付き」の意味まとめ
最後に、「飛び付き」という言葉が持つ3つの意味を振り返っておきましょう。
| 稽古方法 | 仕切りをせず、我勝ちに土俵に入って対戦を行う過酷な稽古 |
|---|---|
| 花相撲での余興 | 仕切りなしで相手を連続して負かす「飛び付き五人抜き」など |
| 前相撲の別称 | かつて飛び付き方式だった前相撲や、その新弟子力士を指す古い呼び名 |
どの意味においても、「仕切りをしない(いきなりぶつかる)」という点が「飛び付き」を理解する上での最大のポイントです。
他にも気になる相撲言葉が調べたいときは、大相撲用語事典へぜひどうぞ。
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