大相撲の会場を訪れると、入り口や櫓(やぐら)の上で、巨大な木の板にびっしりと書かれた「番付」が目を引きます。
今回は、本場所の雰囲気を象徴する「板番付(いたばんづけ)」について、その巨大なサイズや独特の書体、そして知られざる作成の裏側まで詳しく解説します。
この記事の目次
板番付(いたばんづけ)とは
大相撲における「板番付(いたばんづけ)」とは、本場所の開催に合わせて、会場に宣伝として掲げられる巨大な看板のことです。
実は、現在普及している紙に印刷された「本番付」よりも板番付のほうが歴史は古く、江戸時代には興行地において力士の顔ぶれを知らせる「立看板」として、重要な役割を果たしていました。
職人が支える「総ヒノキ製」の巨大看板
板番付は非常に立派な造りをしており、材質は総ヒノキ製です。サイズはタテ約220センチ、ヨコ約190センチ(地方場所はこれよりやや小さめ)という圧倒的なスケールを誇ります。
「腹ばい」で書き上げる独特な職人技
この巨大な板に文字を書き入れるのは、巡業の板番付で経験を積んだ幕下格の行司2名の重要な任務です。
本場所前の週になると、東京場所の場合は国技館の「東の支度部屋」に板が置かれ、3〜4日間を費やして書き上げられます。板が大きいため、行司たちは板の上に腹ばいになって書くという独特の体勢をとります。基本的に、上の段を兄弟子が、下の段を弟弟子が担当して書き進めます。
書く際にも驚きのテクニックがあります。手が墨で汚れないように「左から右へ」と書いていくのですが、縦書きの番付でありながら、たとえば「前頭」と書く場合、「前」だけを横一列にズラッと書き、次に「頭」だけを横一列に書いていくそうです。こうすることで、文字の高さがきれいに揃うという、まさに職人技が光っています。(なお、スペースの都合上、改名した力士の「〇〇改」という注釈は書かれないというルールもあります)
かんなで削って「再利用」する伝統
驚くべきことに、この巨大なヒノキの板は場所ごとに使い捨てられるわけではありません。場所が終わると表面をかんなで薄く削って墨の文字を消し、また同じ板に翌場所の番付を書き入れるという、歴史ある「エコ」な手法が今も受け継がれています。
大入りを願う「相撲字」と「入山形」
板番付のデザインには、興行の成功を願うさまざまな縁起が担がれています。ちなみに江戸から昭和初期にかけては、興行年月日などが書かれた「蒙御免(ごめんこうむる)」などの御免札部分と、力士の四股名部分が分かれた2部構成のスタイルだったこともあります。
板を真っ黒に埋める「相撲字」
板番付に書かれるのは、相撲界特有の毛筆書体である「相撲字(すもうじ)」です。字と字の隙間を極限まで埋めるように太く書かれるのは、「会場に立錐の余地もないほどお客様が入り、大入り満員になるように」という願いが込められています。とくに板番付では「板全体が真っ黒に見えるほど太く書く」のが良いとされています。
「入山形(いりやまがた)」の屋根
板番付の上部(屋根に当たる部分)は、漢字の「入」という字を模した形に作られています。これを「入山形(いりやまがた)」と呼び、文字通り「お客様がたくさん入るように」という切実な祈念が込められた伝統的な装飾です。
板番付が掲げられる場所
板番付は場所中、会場の最も象徴的な場所に1枚だけ掲げられます。
- 東京・国技館の場合: 会場外にそびえ立つ「櫓(やぐら)」の中ほどの高さに設置されます。
- 地方場所(大阪・名古屋・福岡)の場合: 会場の入り口付近など、観客の目に最もつきやすい場所に立てて掲げられます。
大相撲を現地で観戦する際は、行司の手書きによる迫力ある筆遣いと、大入りを願う想いが詰まったこの「板番付」の前で、ぜひその歴史の重みを感じてみてください。
他にも気になる相撲言葉が調べたいときは、大相撲用語事典へぜひどうぞ。
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