大相撲の千秋楽、すべての取組が終わってもまだ優勝者が決まらない……そんな劇的な展開で行われるのが「優勝決定戦」です。
普段の本割(通常の取組)では絶対に見られない同門対決や、3人以上が並んだ際の独特な「くじ引き」システムなど、決定戦ならではの特別なルールやドラマが存在します。
今回は、土俵を最高潮に熱狂させる「優勝決定戦」の仕組みや知られざる歴史について、詳しく解説していきます!
この記事の目次
大相撲の「優勝決定戦」とは?
大相撲の「優勝決定戦」とは、千秋楽(15日目)の取組をすべて終えた時点で、各地位(幕内や十両など)における最高成績の力士が複数出た場合に、優勝者を決めるために行われる「本割(通常の取組)」以外の特別な取組のことです。
昔は「決定戦」が存在しなかった?
実は、大相撲に優勝制度が設けられた明治42年(1909年)当初は、優勝決定戦というシステムはありませんでした。当時は、成績トップの力士が複数いた場合、番付が上位の力士が無条件で優勝となる「番付上位者優勝制度」が採用されていました。
しかし、戦後の大相撲人気を回復させるための方策として、優勝争いへの興味をより喚起するために同点者による直接対決が企画され、昭和22年(1947年)6月場所から優勝決定戦が導入されました。すると、さっそくこの場所に幕内で決定戦が実現し、9勝1敗で並んだ横綱・羽黒山(はぐろやま)、大関・前田山、同・東冨士、前頭8枚目力道山(りきどうざん)の4力士が優勝を争い、羽黒山が制して大きな話題を呼びました。
なお、十両以下の各段でも同様に決定戦が行われますが、昭和25年(1950年)1月場所から昭和31年(1956年)1月場所までの間だけは、幕下以下での決定戦は行われず、一時的に上位力士が優勝となるルールに戻っていた歴史もあります。
優勝決定戦はいつ、どうやって行われる?
決定戦は、各段すべての取組が終了する千秋楽に行われます。
- 幕内の決定戦:千秋楽の「結びの一番(本割の最後の取組)」が終わり、「弓取り式」が行われた後に実施されます(※弓取り式はあくまで“本割の終了”を示す儀式であるため、決定戦の前に行います)。
- 十両以下の決定戦:原則として、幕内力士の土俵入り前(中入り)のタイミングで、下の段(序ノ口)から順番に行われます。
ただし例外として、十両の優勝争いに絡む力士が幕内力士と対戦を組まれている場合は、その力士の取組結果を待つ必要があるため、幕内の取組を一時中断して決定戦が行われることもあります。
3人以上が並んだ場合は「くじ引き」で決定
同点の力士が2人の場合は直接対決ですが、3人以上の場合は直前に力士本人が土俵下で「くじ」を引き、取組の組み合わせを決定します。
3人の場合は、2連勝した力士が優勝となる「巴戦(ともえせん)」が行われます。4人以上の場合はトーナメント方式や、シード権を交えた変則的な巴戦となります。過去には序二段でなんと「12人」もの力士が同点となり、大規模な決定戦が行われた記録も残っています。
本割では見られない「同部屋対決」が実現!
優勝決定戦の最大の見どころのひとつが、同部屋の力士や、近親者(4親等以内)同士の対戦が組まれることです。
大相撲の本割では、所属部屋が同じ力士や兄弟などは対戦しない決まりになっています。しかし、優勝決定戦においては「同点者は全員出場する」という絶対のルールのほうが優先されるため、普段は決して見られない同門対決が実現します。
過去には、平成元年(1989年)7月場所での千代の富士と北勝海の横綱同部屋対決や、平成7年(1995年)11月場所での若乃花と貴乃花による「史上初の兄弟対決による優勝決定戦」など、相撲史に残る名勝負が生まれています。
行司や呼出、審判の担当はどうなる?
決定戦を裁く行司や呼出は、出場力士と同じ地位(格)の者が務めるというルールがあります。また、控えにも行司が入り、取組が多い場合(幕内は2番ごと)は交代して裁きを行います。
幕内の決定戦の場合、出場力士の最上位が横綱・大関なら最高位の「立行司(たてぎょうじ)」、関脇・小結なら「三役格行司」、全員が前頭なら「幕内格行司」が担当します(呼出も同様です)。なお、呼出の呼び上げは本割とは異なり、三役以上の力士であっても「一声」のみで行われます。
立行司が裁く際の現在の原則では、木村庄之助と式守伊之助が共に出場している場合、庄之助が土俵に上がり、伊之助が控えに入ります(過去には伊之助が先に上がる例外もありました)。もし立行司が不在や休場などで欠員となっている場合は、三役格行司が代行を務めます。
勝負審判については、特別な入れ替えを行わず、その直前の取組を担当していた審判団がそのまま決定戦も担当することになっています。
決定戦の勝敗は「翌場所の番付」に影響する?
熱戦が繰り広げられる優勝決定戦ですが、ここでの勝敗は、翌場所の番付編成には「原則として影響しない」とされています。番付は、千秋楽から3日以内に招集される番付編成会議で、あくまで15日間の「本割」の成績をもとに編成されるからです。
かつては同地位の力士同士で決定戦が行われても、その勝敗が番付の上下に反映されることはなく、決定戦に負けた力士が翌場所で上位になる(序列の逆転が起きない)ということがありました。しかし、平成9年(1997年)9月に規約が改正され、現在では「同地位で決定戦を行った場合のみ、優勝者を上位とする」ことになっています。
この新ルールが初めて適用されたのが、平成13年(2001年)1月場所の決定戦です。この時、西の正横綱だった武蔵丸と、東の2番手横綱だった貴乃花が対戦して貴乃花が優勝した結果、翌場所では貴乃花が東の正横綱へと地位を逆転させました。ただし、3人以上の決定戦において横綱や大関同士で同点者が複数いた場合などは、引き続き地位の逆転は起こらない規定となっています。
「優勝決定戦」のまとめ
今回は、千秋楽の土俵を最高潮に盛り上げる「優勝決定戦」について解説しました。単なる勝ち負けだけでなく、くじ引きの運や巴戦の連戦の過酷さ、そして本割では見られない同部屋対決や兄弟対決といったドラマが詰まっているのが決定戦の魅力です。千秋楽に星が並んだ際は、ぜひ本割とは違う特別な緊張感を楽しんでみてください。
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