大相撲の土俵を作る土「荒木田(あらきだ)」とは?産地や歴史、処理方法まで解説

大相撲中継で、力士たちが激しくぶつかり合っても崩れない頑丈な「土俵」。あの土俵が、どのような土で作られているかご存知でしょうか。

今回は、大相撲の土俵づくりに絶対に欠かせない専用の土「荒木田(あらきだ)」について、その特徴や歴史、そして現代の土俵を支える驚きの職人技まで詳しく解説します。

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荒木田(あらきだ)とは?土俵専用の特別な土

大相撲における「荒木田(あらきだ)」とは、土俵を造るために使用される粘土質の土の名称です。

大相撲の本場所では、幕下以下の取組から始まり、土俵入り、行司や呼出の動きを含めると、1日に約1,000人近くもの人間が土俵に上がると言われています。巨体の力士たちが毎日激しく四股(しこ)を踏み、投げを打ち合っても土俵が崩れないのは、この「荒木田の土」を使っているからです。

荒木田は非常に粘り気(接着力)が強いという特徴があります。たっぷりの水を含ませて練り込み、タコやタタキと呼ばれる専用の道具で叩き固めると、カチカチのコンクリートのように硬くなります。それでいて乾燥が速いため、まさに土俵造りにとってこれ以上ない「最適な土」なのです。

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「荒木田」の名前の由来と現在の産地

なぜこの土を「荒木田」と呼ぶのでしょうか。

それは、江戸時代から明治時代にかけて、この土が旧荒川(現在の隅田川)流域の「荒木田の原(現在の東京都荒川区や足立区周辺)」で採掘されていたことに由来します。暴れ川と呼ばれた荒川が何度も氾濫を繰り返す中で、流されてきた粘土と砂が程よく混じり合い、極めて良質で丈夫な土壌が形成されたのです。

現在では都市開発が進み、当時の荒木田の原から土を採取することはできなくなりました。そのため、現在は埼玉県(川越市周辺)などで採掘された良質な土が「本荒木田」として国技館に納入されています。産地が変わった現在でも、土俵用の土は敬意と伝統を込めて、変わらず「荒木田」の名称で呼ばれ続けています。

自然の土そのままじゃない?驚きの「ブレンド技術」

実は、土俵に使われている荒木田は、採掘した自然の土をそのまま持ってきているわけではありません。納入する専門の建材会社(土のソムリエ)と、土俵づくりの責任者である「呼出(よびだし)」がタッグを組み、徹底した品質管理とブレンドが行われています。

輸送日数まで計算された水分調整

掘り上げた土は、まず倉庫で約半年間寝かせて乾燥させます。その後、呼出からの細かな要望を聞き取り、水を加えたり乾いた土を混ぜたりして、土俵に最適な水分量へと調整(ブレンド)していきます。
さらに驚くべきことに、東京から大阪や福岡の地方場所へ土を運ぶ際は、「輸送にかかる2日間の乾燥具合」まで綿密に計算し、あらかじめ水分を数パーセント多く調整してから送り出しているのです。

「粘り気」と「滑り」の絶妙なバランス

土俵はただ硬くて崩れなければ良いというわけではありません。踏ん張りを効かせるためには一定の硬さが必要ですが、ある程度「滑る」余裕がないと、力士の足首や膝に深刻な怪我を招いてしまいます。
そこで、強い粘り気を持つ荒木田をベースにしつつ、俵の内側には滑りを良くするための「砂」を撒くことで、安全に競技ができる絶妙なバランスを保っています。

年6場所すべて「荒木田」に統一された歴史

実はつい最近まで、この荒木田の土が使われるのは東京開催の本場所(一月・五月・九月)だけでした。

大阪、名古屋、福岡で開催される地方場所では、運搬コストの問題から、現地の質の近い土を探して土俵を作っていました。しかし、現地の土ではどうしても粘り気や感触が異なり、力士から「滑りやすい」「踏ん張りが効かない」といった声が上がることがありました。(これが、春場所などが「荒れる」と言われた理由の一つでもあります)

そこで、公平で安全な土俵環境を整えるため、平成29年(2017年)の11月場所(九州場所)から、地方場所にも東京からトラックで荒木田の土を運んで土俵を造ることになりました。これにより、現在では年6回の本場所すべてが、同じ基準でブレンドされた最高品質の土俵で開催されています。

相撲規則にも明記されている絶対のルール

この「荒木田」の使用は、単なる慣習ではなく、日本相撲協会のルールブックである「相撲規則」にもしっかりと明記されています。

相撲規則 土俵規定 第2条
土俵は荒木田(あらきだ)をもってつきかため、四股を踏んでも足跡がつかない堅さにして、砂を入れる。

呼出たちが3日間かけて手作りで叩き上げる土俵の裏には、目に見えない土の職人たちの情熱が詰まっています。

使い終わった土俵の土はどうなる?

ちなみに、15日間の激闘を終え、千秋楽の翌日には土俵はすぐに崩されてしまいます。この大量の「荒木田の土」はその後どうなるのでしょうか。

実は、取組前に力士たちが清めとして大量の「塩」を撒いているため、塩分を多量に含んだ土はそのまま植物などを育てる自然の土として再利用することができません。そのため、使用済みの土俵の土は産業廃棄物として専門の業者によって適切に処理されています。これも大相撲ならではの意外な事実です。


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