大相撲中継を見ていると、力士たちが何度も見合ってはしゃがみ込む動作を繰り返すのを目にします。
今回は、相撲の勝負が始まる前の極めて重要な準備動作「仕切り(しきり)」について、土俵に引かれている「仕切り線」のルールや、構えの型の違いなどを詳しく解説します。
この記事の目次
仕切り(しきり)とは
大相撲における「仕切り」とは、両力士が土俵の中央で相対し、腰を下ろして立ち合い(勝負開始)に備えてにらみ合い、互いの呼吸を合わせるための一連の動作のことです。
相撲は立ち合いの一瞬で勝負が決まることが多い競技ですが、その一瞬のために、これほど時間をかけて準備動作を行う競技は他に類を見ません。仕切りは単なる準備運動ではなく、相手の動きを見極め、自分の精神を極限まで集中させるための重要な心理戦の時間でもあります。
※仕切りの中で行われる「塵手水(ちりちょうず)」や「蹲踞(そんきょ)」といった具体的な作法の意味については、以下の記事で解説しています。
「仕切り線」と制限時間の歴史
力士たちが仕切る際、目安にしているのが土俵中央に引かれた2本の白い線「仕切り線」です。
ラジオ中継を機に導入された
実は、かつての大相撲には「制限時間」も「仕切り線」も存在せず、両者の息が合うまで延々と(時には1時間以上も)仕切りを繰り返していました。昔の仕切りは、互いに頭をつけ合うようにしたり、ぐんと離れて仕切ったりと自由なものでした。
しかし、昭和3年(1928年)にラジオの実況放送が開始されたことを機に、放送時間内に取組を終わらせるために「仕切り時間」が制限されるようになりました。(当時は幕内10分。現在は幕内4分、十両3分、幕下以下2分と短くなっています)。そして同時に、互いが一定の間隔を保って自主的に立つための基準として、スタートラインにあたる「仕切り線」が土俵に引かれるようになったのです。これは大相撲が近代的スポーツの仲間入りをする第一歩でもありました。
仕切り線の材質とサイズの変遷
昭和3年の導入当初は、土俵の中央に60cm間隔で長さ1mの浅い溝を掘り、そこに「石灰」や「白セメント」を流し込んで線を引いていました。
現在ではエナメル塗料で白く描かれており、サイズも時代に合わせて調整されてきました。昭和45年(1970年)5月には「間隔70cm、幅6cm、長さ80cm」と定められましたが、その後さらに変更され、現在の厳格なサイズは以下のようになっています。
- 線の長さ: 90センチメートル
- 線の幅: 6センチメートル
- 2本の線の間隔: 70センチメートル
力士たちはこの70センチの間隔を挟んで、激しくぶつかり合うタイミングを計ります。
時代とともに変わった「仕切りの姿勢」
仕切りの姿勢も、時代とともに変化してきました。
江戸時代には、腰を深く落として両手を曲げずに真っ直ぐ伸ばす「狛犬仕切り(こまいぬしきり)」という構えが主流でした。しかし明治以降になると、現在のように腰を上げ、両腕を曲げて低く構えるスタイルへと変化していきました。
仕切りの「3つの型」
現代の仕切りの構えは、重心の高さによって大きく3つの段階(上段・中段・下段)に分類することができます。
両手は肩幅より心持ち広く置き、手足の位置が正方形になるのが基本原則ですが、力士それぞれの体形や相撲のスタイルによって工夫が凝らされています。
① 上段の仕切り
重心を比較的高く保つ構えです。ダッシュを利かせて一気にスピードに乗りやすく、突っ掛けたり先手を取ったりすることを得意とする力士に向いています。ただし、左右からの攻撃にもろいというリスクも伴います。
② 中段の仕切り
最もポピュラーな構えです。多くの力士がこの中段の仕切りを採用しており、攻守のバランスが取れた標準的なスタイルと言えます。
③ 下段の仕切り
重心を低く落とす構えです。攻撃よりも防御に重点を置いたスタイルで、顎を引き、手を軽く握り、目線は相手を上目遣いに見上げます。自分から仕掛けるよりも、相手の攻めをかわして迎撃する戦法を取る場合に有利な仕切りです。
「仕切り」のまとめ
相撲の「仕切り」は、立ち合いという一瞬の爆発に向けてエネルギーをため込む、静かで張り詰めた時間です。昭和3年のラジオ放送を機に導入された制限時間と「仕切り線」のルールの下で、力士たちは上段・中段・下段といった自身の相撲スタイルに合わせた型で相手と対峙しています。制限時間いっぱいに向かって高まっていく、土俵上の緊迫した空気感にぜひ注目してみてください。
※仕切りを終え、いざ勝負を開始する「立ち合い」の極意やルールについては、以下の記事をご覧ください。
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