取組の見所である「決まり手」。大相撲には現在これだけの技が存在します。
大相撲の力士には、それぞれ得意とする戦い方(スタイル)があります。そのスタイルは大きく分けて「四つ相撲(よつずもう)」と「押し相撲(おしずもう)」の2つに分類されます。
相撲中継の解説で「彼は四つ相撲ですからね」「今日の立ち合いは押し相撲の良さが出ました」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。
この記事では、大相撲における2大スタイル「四つ相撲」と「押し相撲」の特徴、それぞれのメリット・デメリット、そして両者が対戦した際の駆け引きについて詳しく解説します。力士の戦法を知れば、土俵上の攻防が何倍も面白く見えてくるはずです!
この記事の目次
「四つ相撲」とは?:組んで勝負する王道スタイル
四つ相撲とは、お互いにまわしを取り合い、がっぷり組んだ体勢(四つ身)から、寄りや投げで勝負を決めるスタイルのことです。
自分の得意な組み手(右四つ、または左四つ)の型を持っており、いかに自分の型に持ち込むかが勝負の鍵となります。(※四つ身の基本については別記事『上手・下手と四つ身を完全解説』をご参照ください)
四つ相撲のメリット
- 安定感がある:相手のまわしをガッチリと掴むため、足腰の重さや体の密着度を活かして、自分のペースでじっくりと攻めることができます。
- 多彩な技が出せる:寄り切りや寄り倒しはもちろん、上手投げ、下手投げなどの大技や、掛け手など、状況に応じた多様な決まり手を繰り出すことが可能です。
四つ相撲のデメリット
組むということは、同時に相手にもまわしを与えてしまうリスクを伴います。相手に自分の苦手な組み手(例えば、けんか四つで相手有利な形など)に持ち込まれると、たちまちピンチに陥ります。また、組んでから勝負がつくまでに時間がかかることが多く、スタミナを消費しやすい面もあります。
「押し相撲」とは?:組ませず一気に押し出す速攻スタイル
押し相撲とは、相手のまわしを取らず、強烈な突っ張りや押し(ハズ押しなど)だけで相手を土俵外へ追い出すスタイルのことです。突き押し相撲とも呼ばれます。
立ち合いから猛烈なスピードと破壊力で相手の懐に飛び込み、相手に何もさせずに勝負を決めるのが理想です。
押し相撲のメリット
- 一撃の破壊力とスピード:立ち合いの衝撃力や突っ張りの連打はすさまじく、相手が体勢を整える前に数秒で勝負を決めることができます。
- 相手に自分の形を作らせない:まわしを取らないため、四つ相撲が得意な相手に「組む」という土俵を与えず、相手の良さを完全に封じ込めることができます。
押し相撲のデメリット
常に前に出る圧力をかけ続けなければならないため、相手に「いなされる(横に躱される)」や「叩かれる(引き落とされる)」といった動きに非常に脆いという弱点があります。一度バランスを崩して前にのめってしまうと、修正がきかずにあっさりと負けてしまうことも少なくありません。
四つ相撲 vs 押し相撲の駆け引き
四つ相撲の力士と押し相撲の力士が対戦する場合、土俵上では明確なテーマを持った駆け引きが展開されます。
押し相撲の力士は「いかに相手にまわしを取らせず、距離を保って突き放すか」を狙います。強烈な突っ張りで相手の顔を上げさせたり、おっつけで相手の差し手を封じたりして、組む隙を与えません。
対する四つ相撲の力士は「いかに相手の突き押しをかいくぐり、自分の得意な組み手に持ち込むか」を考えます。相手の突っ張りを下から「はね上げ」ていなしたり、一瞬の隙を突いて懐に潜り込み、前まわしを引いたりする高度な技術が求められます。(※相手の突き手を封じる技術については別記事『おっつけ』もご参照ください)
歴代の名力士たちとそれぞれのスタイル
角界の歴史に名を残す名力士たちは、自身のスタイルを極限まで磨き上げていました。
四つ相撲の代表的な力士
歴代の大横綱の多くは、絶対的な四つ身の型を持つ四つ相撲の力士です。
- 双葉山(第35代横綱):右四つ・左上手という完璧な型を持ち、前人未到の69連勝を達成。
- 白鵬(第69代横綱):右四つからの盤石の攻めは他を寄せ付けず、史上最多優勝記録を打ち立てました。
- 稀勢の里(第72代横綱):強烈な左おっつけから得意の左四つに持ち込み、力強い寄りを見せました。
押し相撲の代表的な力士
圧倒的なスピードと回転力で館内を沸かせる押し相撲のスペシャリストたちです。
- 千代大海(大関):「ツッパリ大関」と呼ばれ、マシンガンのような猛烈な突っ張りで一時代を築きました。
- 曙(第64代横綱):恵まれた巨体を活かした強烈な突き押しで、相手を土俵の外へ吹き飛ばしました。
- 貴景勝(大関):小柄ながらも強靭な足腰から繰り出す、重く鋭い突き押しを武器に大関へと昇進しました。
万能型(四つも押しもできる力士)
四つに組んでも強く、離れて突き押しでも勝負できる、非常に対応力の高い力士も存在します。大鵬(第32代横綱)や北の湖(第55代横綱)、日馬富士(第70代横綱)などは、状況に応じて柔軟に戦い方を変えられる万能型の強さを持っていました。
次に大相撲を観戦する際は、取組前の呼び出しの時点から「この力士は四つ相撲か、押し相撲か」を意識して見てみてください。立ち合いのぶつかり合いから、お互いが「自分の形」を作ろうとするせめぎ合いが、より深く、ドラマチックに感じられるはずです。
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