プロ野球やサッカーなどのプロスポーツでは、選手が別のチームへ移る「移籍」や「トレード」が頻繁に行われますが、大相撲の世界ではどうなのでしょうか。
今回は、「人間関係が合わない」「もっと強い部屋に行きたい」といった理由で相撲部屋を替わることができるのか?という疑問にお答えし、大相撲における「移籍(いせき)」の厳格なルールと、それが認められる特例の条件について詳しく解説します。
大相撲で「移籍」はできる?原則禁止の厳しい掟
大相撲における「移籍」とは、力士や行司、呼出などの協会員が、現在所属している相撲部屋から別の相撲部屋へ所属を移すことを指します。
結論から言うと、大相撲の世界では入門時(採用時)に決まった相撲部屋から「個人的な理由で移籍することは原則として一切できない」という非常に厳しい掟が存在します。
「師匠とウマが合わない」「他の部屋の稽古環境のほうが強くなれそう」といった個人の希望による部屋の移籍は、絶対に認められません。
なぜ個人的な移籍はできないのか?
移籍が固く禁じられている理由は、相撲部屋が単なる「トレーニングジム」や「スポーツチーム」ではなく、日本の伝統的な「徒弟制度(とていせいど)」と「疑似家族」の考え方に基づいているからです。
相撲界では、部屋の師匠(親方)は「父親」、おかみさんは「母親」、兄弟子や弟弟子は「兄弟」という絶対的な家族関係が築かれます。一つ屋根の下で寝食を共にし、相撲の技術だけでなく生活のすべてを師匠から教わります。「家族が嫌になったから別の家族になる」ということが一般社会で簡単にできないのと同様に、相撲界でも一度入門した部屋からの移籍は許されないのです。
どうしても部屋を辞めたい場合は「引退」のみ
もし、人間関係の悪化などでどうしてもその部屋にいることが耐えられず「辞めたい」となった場合、別の部屋に移籍するという選択肢はありません。
その場合は「引退(日本相撲協会からの退職)」しか道はなく、一度引退した力士が別の部屋から再入門することも不可能です。それほどまでに、入門する相撲部屋選びは力士の人生を左右する重い決断となります。
移籍が認められる「やむを得ない特例」の条件
原則禁止である移籍ですが、力士個人のわがままではなく、「部屋自体が存続できなくなった場合」にのみ、特例として他の部屋への移籍が認められます。
具体的には以下のようなケースです。
- 部屋を運営する師匠(親方)が停年(定年)退職を迎えたが、部屋を継承する別の親方がいない場合
- 師匠が急死したり、重い病気などで部屋の運営が困難になった場合
- 師匠が不祥事などで日本相撲協会から除名・退職などの処分を受け、部屋が閉鎖された場合
このようなやむを得ない事情で部屋が閉鎖される場合、相撲協会は所属力士本人の意思を尊重しつつ、新たに所属すべき受け入れ先の部屋を決定し、理事会の承認を経て初めて「移籍」が行われます。
近年のトレンド「分散移籍」
部屋が閉鎖されて移籍となる場合、かつては同じ「一門(いちもん)」と呼ばれるグループ内の別の部屋へ、力士や裏方たちが全員まとめて移籍(引き取り・預かり)となるのが通例でした。
しかし近年では、受け入れ先の部屋のキャパシティ(生活スペースの広さや設備の規模)の問題や、個人の希望を考慮し、複数の異なる相撲部屋へと力士たちが分散して移籍するケースも増えてきています。ニュース等で「〇〇部屋閉鎖に伴う転属」と報じられるのがこのケースです。
裏方に適用される「協会主導の異動」
力士の個人的な移籍は固く禁じられていますが、行司・呼出・床山といった「裏方(うらかた)」の協会員については、部屋の閉鎖という事情以外でも、ごく稀に所属が変わるケースがあります。
それは、日本相撲協会による異動(所属変更)です。
各相撲部屋における裏方の定員調整や、業務上の必要性があると協会が判断した場合、特例として協会主導で所属部屋の変更が認められたり、命じられたりすることがあります。これは一般的な会社における「人事異動」に近い性質のものです。
※部屋の閉鎖による移籍の際、受け入れ先の部屋に定められた「外国出身力士枠(1部屋1人まで)」の制限はどう適用されるのか?といった複雑な特例ルールについては、以下のコラム記事で詳しく解説しています。
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