大相撲中継で際どい勝負になり「物言い」がついた際、解説者が「今、ビデオ室と連絡を取っていますね」と語っているのを聞いたことはありませんか?
今回は、勝負判定の裏側を支える「ビデオ室」の役割や、大相撲にビデオ判定が導入されることになった歴史的なきっかけについて解説します。
ビデオ室(びでおしつ)とは
大相撲における「ビデオ室」とは、土俵上の際どい勝負判定をより正確に行うため、会場内に設けられたビデオ判定用の部屋のことです。
土俵下で行司の判定に対して「物言い」がついた際、土俵上の審判長が電話を使ってビデオ室を呼び出し、映像を見た結果の参考意見を求めます。
ビデオ室には、日本相撲協会の審判委員2名と、決まり手係の年寄(親方)1名が常に詰めており、中継を行っているNHKの映像(複数のアングルからのスロー映像など)のモニターをチェックしながら土俵上の協議をサポートしています。
あくまで「土俵下の眼」が優先される
スポーツ界でビデオ判定システム(VARなど)が普及している現代ですが、大相撲のビデオ室が提供するのは、あくまで「判定の参考資料(意見)」にとどまります。
最終的な勝敗の決定権は、ビデオ室ではなく土俵下で実際に勝負を見ていた5人の審判委員たちにあります。映像技術がどれだけ進歩しても、勝負を裁くのは生身の人間の眼であるという伝統的な原則が守られているのです。
ビデオ判定導入のきっかけ「世紀の大誤審」
このビデオ室(ビデオ判定システム)は、昭和44年(1969年)の5月場所から導入されました。これには、大相撲の歴史に残る「大事件」が深く関わっています。
導入の直前である昭和44年(1969年)3月場所、それまで破竹の45連勝を続けていた第32代横綱・大鵬が、平幕の戸田に敗れて連勝がストップするという大波乱が起きました。
行司の軍配は戸田に上がり、物言いもつかずに大鵬の負けが決まりましたが、翌日の新聞やテレビの映像では、明らかに戸田の足が先に土俵の外へ出ていたことが証明されてしまったのです。
この「世紀の大誤審」とも言われる事件によって勝負判定のあり方に大きな疑問が投げかけられ、以前からくすぶっていたビデオ導入案が一気に加速し、翌場所からのビデオ室の設置へと繋がりました。
※ビデオ室との連携を含む「物言い」の詳しいルールや、行司が判定を間違えた際の「差し違え」の重みについては、以下のコラム記事で解説しています。
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